ちょうどひと月ほど前の3月7日、宮城県の地元紙・河北新報の夕刊に連載していたエッセイに「宮城県内注目のアート」という文章を書きました(こちら。震災のためその後の連載は休止)。
そこで私は、宮城県内注目のアートとして、吉川由美さんの南三陸町での取り組み「生きる博覧会」と村上タカシさんの「アート・インクルージョン」についてとりあげました。どちらもその地域やコミュニティならではの活力をすくいあげるような横断的な非常に意欲的な取り組みです。
そこに今回の震災。特に吉川さんが入っていた南三陸町は、連日全国ニュースで取り上げられるほどの壊滅的被害にあってしまいました。
ところが、やはりなおこのふたりの「アート」は注目すべき取り組みなのです。
吉川さんは自身も仙台で被災していながら、地震の翌週には秋田のお父様でトラックで南三陸町入り。支援物資を届けるとともに、その後も継続して現地入りし、ケアチームとともに支援にあたっています。
こうした動きを受け、南三陸町での「生きる博覧会」を全国プログラムとして助成し、ネットワーク連携を行っている「アサヒ・アート・フェスティバル」では、吉川さんが南三陸町で行った「きりこワークショップ」を東京でも開催したり、東京出張中の吉川さんを囲んで現地の話を聞いたりし、今後具体的支援を行っていく方針です。
また、村上タカシさんは昨年秋から仙台市長町を舞台に始めたバリアフリーなアート・プロジェクト「アート・インクルージョン」のネットワークを使い、先週末には仙台の街中で「大震災復興支援チャリティコンサート」をスタート(6/26まで毎週土日開催。映像はこちら)させたほか、自身の組織MMIXで「大震災復興支援プロジェクト」を立ち上げ、今後長期的な視野に立ってアートにできる復興支援を行っていきます。
特に昨年「アート・インクルージョン」を行った仙台市長町駅前は再開発エリアになっており、市立病院建設予定地となっている更地に2年間の予定で被災者のための仮設住宅が作られることになっています。「アート・インクルージョン」はすでに今年10月2週目に開催が決定しており、そこではこれら仮設住宅エリアを含め、仙台・長町でアートによる「包摂プロジェクト」が行われることになるでしょう。
宮城県内のアートを使った取り組みとして、最も注目すべき活動を行っていたおふたりの取り組みは、震災に際して頓挫することなく、それどころか震災を乗り越える新たな取り組みとして、いよいよ重要な活動になっています。
(門脇篤)