地域見守り勉強会の報告(岩手県野田村)

NVNADでは、野田村社会福祉協議会が推進されている「地域見守り勉強会」を応援して参りました。今年度は、さらに、この勉強会で学び実践していく学生さんを選考し、鳥居寛君(京都大学総合人間学部4回生)をNVNADから支援することとしました。初めて野田村を訪れた鳥居君からの報告です。

<題名>野田村に初めて行ってきました。

<本文>
5月30日(木)から6月2日(日)と短い間でしたが、NVNADさんのご支援を受けて、野田村に行ってきました。それまでも、講義などを通して野田村について話を伺っていたのですが、実際に行くのは今回が初めてでした。京都から野田村までは大変遠く、朝6時に出発して、新幹線やバスを乗り継いで、昼の3時に着くという大移動でした。海に近い場所に建っていた家はほとんどが津波によって流されてしまい、家の基礎などがその面影を残すのみとなっています。また、かつてそこにあったという松林も今では数本しか残っておらず、海水をかぶってしまったために枯れかけているものもあります。町を歩いてみても、海から離れた場所にたっている鳥居の柱には、津波に流された瓦礫によって残された傷がついていたりと、今でも2年前の東日本大震災の痕跡が残されていることがわかります。しかし、夜はカエルの鳴き声があたりをつつみ近くに明かりはほとんどないため星空がきれいに見える、のどかな場所でした。

二日目の31日には、野田村の社会福祉協議会の方との平成25年度第一回目の地域見守り勉強会に参加させていただきました。これまでも何回も開催されており、その主な目的は、震災からの復興の際に想定される課題がどのようなものであり、いかに対処していくかということについて、情報交換をして実践を高めていくことです。今回のメインテーマとしては、今後仮設住宅等から災害公営住宅等へ引越しをされる方が増えていくと考えられるが、その具体的な時期はいつ頃であり、どのようなニーズが生まれ、それに対してどのようにして支援をしていけるか、ということでした。震災から2年経った今でも、多くの人が仮設住宅に住んでいます。野田村では高台団地が2015年に完成する予定であり、今年からは災害公営住宅への引越しも本格化していくと考えられるのですが、それまでに様々に想定しておく必要があります。引越しの際には、荷造り・運送・荷解き・掃除といった段階があるが、どの段階でどこまで手伝うことができるかは世帯ごとに異なってくるので、地域見守り活動を通じて世帯ごとのニーズを捉えていく必要があることがわかりました。しかし、引越しを手伝う側の人手不足が課題としてあがってきました。社会福祉協議会の方だけではとても回らないので、ボランティアの方や地元の高校生をいかにして巻き込んでいくかを考えなければなりません。また、仮設住宅に暮らす小さなお子さんがいる家庭で、うるさくして周りに迷惑をかけているのではないかという気遣いから一時的にアパートを借り、そこから高台団地に移転したいのだが制度としては認められないという話も出てきました。全体として高台移転のめどはたっているとはいえ、しばらくは仮設住宅での暮らしも続き、個々の事情も異なるので、柔軟な対応ができるよう検討していくことも大事だと思われます。このように課題もあるのですが、引越しは手伝う側と相手が仲良くなれるチャンスでもあると思われます。勉強会を情報共有の場とし、引越しのお手伝いに積極的に関わっていきたいと思います。

私は初めて地域見守り勉強会に参加させていただき、今回は、現状や課題の把握にとどまってしまいましたが、次回からは、一歩踏み込んで一緒に考えていけたらと思います。次回は、6月の下旬を予定しており、具体的な引越しの際のニーズ共有などをしていく予定です。
 三日目の1日には、泉沢仮設の方との交流会に参加させていただきました。交流会には老若男女問わず15人ほどの仮設住宅の方が参加してくださり今回で19回目ということでした。子供たちと野球をしたり、おばあちゃん方と「どう引き」という遊びをしたりとたいへん楽しませていただきました。交流会を通じて仮設住宅の方が世代を超えて関わっていることを感じました。勉強会であがったようなトラブルもやはり生まれてくるのでしょうが、多くの人がお互いに気を遣いあって暮らしていると思いました。この交流会にもまた参加させていただくつもりです。
 今回、短い期間でしたが初めて野田村に行き、実際に暮らす人と話し、現状や課題を聞かせていただくことで分かったことが多々あります。これを、京都で一回整理して、次回6月の下旬に来る際に活かせるようにしてゆきたいと思います。