京成の開発地の一角にあった同潤会千住緑町住宅と緑湯

千住緑町は戦前、京成電車が上野のトンネル工事で出た土を活用して開発した分譲住宅地でした。千住大橋駅から西へ、地図で見ても区画道路が整然と縦横に走る一角がすぐに分かります。この住宅地の一部がかつての同潤会千住緑町住宅です。京成が開発した土地の一部を同潤会が買い取り、住宅を建てました。郊外の住宅よりは小さめで、下宿人向けの間取りもあって、工員向け住宅と言われています。空襲の被害などもあって街割り以外はほとんど残っているものはありませんが、それでも改築された建物の一部に同潤会の木造住宅の名残があるような気がします。
東端の踏切のあたりには西千住という駅もあったそうですが、戦争中に不要ということで廃止されました。行ってみれば千住大橋駅からほとんど距離がありませんので、廃止も仕方ないかなという感じです。駅の北は住宅地、駅の南側は工場団地として開発したようで、踏切を渡ったところにある緑工会と書かれた旗台はその名残です。

緑湯は緑町住宅地の北東の端にあたります。墨堤通りに面していて、立派な伝統和風建築、北側は新しい大学のグランドなので、そちら側からも高い煙突と建物の側面がよく見えます。開けっ放しの玄関から入ると、脱衣場は高い格天井、原型が分からないくらいシブくなった壁、楓?の模様が入った擦りガラスの窓、番台にはまめで親切なご主人。ひたすらシンプルでホッとする空間が広がります。
浴室はもちろん湯気抜きのある広くて高い天井、浴槽背景のペンキ絵は濃い色彩の富士と海、「西伊豆、早川」と署名がある早川絵師のものです。ペンキ絵を含めて、木造の壁はかなり傷んでいますが、床のタイルは楽しく、深くて熱めのお湯は気持ちいい。男湯側は前が広いグランドなので、窓から涼しい風が吹き込みますが、見えてる?
緑湯 足立区千住緑町3-28-1 15:00〜23:00 不定休 京成千住大橋から10分くらい