自己発見法(セルフ・カウンセリング)〜ちょっと立ち止まる〜

人それぞれの願いは、さまざまです。
でも、その奥にある願いは、どんなものなのでしょう?
次から次へと変化していく日々の中、
私たちの思いも波打って、流れ着く先を見失いかけます。
ちょっと立ち止まり、自分の本当の願いに思いを寄せてみませんか?

「本当の願いに気づくために」 渡辺 康麿

<自分を条件なしに受容したいと願っている>

人間は、最終的には、何を願っているのでしょうか。
これまで、さまざまな人達が、そのことについて考えてきました。
ある人は、人間は、財力を得ることを願ってやまない存在だ、と考えました。
ある人は、人間は、権力を得ることを願ってやまない存在だ、と考えました。
ある人は、性的快楽を得ることを願ってやまない存在だ、と考えました。
さまざまな考え方がある中で、私は「人間は、自分の存在の意味を
無条件的に認めることを願ってやまない存在なのだ」と考えています。
自分の存在の意味を、無条件的に認めたいという願いこそが、
人間の最終的な願いだと考えているのです。
確かに、人間の心の中には、財力や、権力や、
性的な快楽を求める傾きはあります。
けれども、人間であるがきり、その求めの奥には、自分の存在価値を
確認したいをいう欲求が潜んでいるのではないでしょうか。

<期待にこたえることから欲求が生まれる>

私たちは、私たち自身の内に、そのような無条件的な存在受容の願いが
あるということを、余りはっきりとは自覚していません。
表面的な欲求に目が奪われて、自分の心の奥底に潜んでいる欲求には、
気づけずにいるのです。
なぜ、私たちは、私たちにとって最も大切な欲求に
気づけなくなってしまったのでしょうか。
一人の子どもの成育過程を例に取って考えてみましょう。
幼児期の子どもは、両親の評価によって、
自分の存在の意味を確かめようとします。
親が「良い子ね」とほめれば、<僕は良い子なんだ>と
自分自身を肯定的に評価することができます。
けれども、「何て、悪い子なの!」と叱られれば、<僕は悪い子なんだ>と
自分自身を否定的に評価せざるを得なくなります。
子どもは、親からの肯定的な評価を求めてやみません。
そうすることが、子どもにとっては、自分自身の存在の意味を確認できる
唯一の方法なのですから。
その子が、小学校に入学するような年齢になると、
親は、子どもの成績を気にかけるようになります。
子どもに対して、「勉強してほしい」「良い成績をとってほしい」
という期待を抱くようになります。
子どもは、その親の期待にこたえようと、勉強するようになります。
親の期待にこたえることができれば、
親から肯定的な評価を得ることができるからです。
親の評価に基づいて、子どもは、自分の存在の意味を確認します。
親の期待にこたえることを繰り返すうちに、しだいに、子ども自身の内に、
勉強ができるようになりたい、という欲求が生まれてきます。
また、学校で、成績の良い子が、周りの子から一目置かれていたり、
先生からほめられているのを見るようになると、その子の内に、
<僕も、勉強ができるようになりたい>という思いが、生まれてきます。
こうして、この子のなかに、「勉強ができるようになりたい」
という欲求が形づくられ、段段に強められていくわけです。
そして、私たちは、このような、後から生まれ、
強められた欲求にのみ目を奪われ、
その奥にある欲求に気づけなくなっているのです。

<自己評価不安を抱えつつ生きる>

私たちは、他者の期待にもとづく評価を通して、
色々な欲求を、自分の中で、知らず知らずの内に形成してゆきます。
無意識的に、他者の期待を取り入れて、その期待にかなうことで、
何とか自分を肯定しようと思って生きているわけです。
けれども、私たちは、いつでも他者の期待にこたえることが
できるわけではありません。
いくら頭の良い子であっても、いつでも、どの教科でも、
良い成績を取ることができる訳ではありません。
ほかの子に追い抜かれれば、その子は、
自分のネウチを否定せざるを得なくなります。
また、たとえ、良い成績を取り続けていたとしても、
<いつか、ほかの子に追い抜かれるかもしれない>
という不安が、その子の内に起こってくるかもしれません。
その不安があるかぎり、その子は、
本当の意味で落ち着くことはできないのではないでしょうか。
私たちは、常にそのような落ち着かなさ
(自己評価不安)を抱えて生きているのです。

<自分の本当の願いに気づき受けとめる>

私たちが、自己評価不安に無自覚であるなら、
私たちは、不安に駆られた行動をとるようになることでしょう。
先程の子どもの例であるなら、良い成績を取り続けるために、
これまで以上に、長時間勉強をするようになるかもしれません。
けれども、いくら勉強時間を長くしても、
<いつかは、誰かに追い抜かれるかもしれない>
という不安を、完全になくすことはできないことでしょう。
その子が、本当に落ち着くことができるのは、
「良い成績を取りたい」という欲求の奥に潜む、
「自分の存在の意味を確かめたい」という欲求に気づき、
それを深く受けとめた時なのではないでしょうか。
セルフ・カウンセリングの方法は、誰もが、そのように
自分自身の内面を見つめ、自分の本当の願いに気づけるように
考えられた方法なのです。(%星%)

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http://www.self-c.net