自己発見法(セルフ・カウンセリング)〜ホンネとタテマエを越えて〜

「わかっていても〜〜してしまう」
誰にでもある経験、どうしてそうなってしまうのでしょう?
頭では、「こうするべきなのに」とわかっているはずなのに。
「こうした方がいい」そう言われても、
目の前の出来事に折り合いのつかない気持ちが残ったり。。。

一人、一人が「ああ、そういうことなんだ」と心から、
うなづき納得する為には、どうしたらいいのでしょう?
その方法とそこから目指すものを伝えています。

「ホンネとタテマエの葛藤を越えて」 渡辺 康麿

■どうすればよいかはわかっている■

子育てに悩むお母さんたちの話を聞いたり、
お手紙を読んだりする機会が、よくあります。

あるお母さんから、こんな話しを聞きました。

「子どもが自分から何かをしようとしない、
という事がとても気にかかっています。
その原因が、私にある事はわかっているのです。
それで、できるかぎり口出しをせずに、子どもの様子を見守ろう、
と努力しています。
でも、いつまでもグズグズしている子どもの様子を見ていると、
つい口を出してしまって。。。いつも、あとで後悔をするのです」

また、ほかのお母さんからは、こんな話しを聞きました。

「子そもが私の顔色をうかがうようになってしまいました。
これまで、私の考えを子どもに押しつけ過ぎていたのではないかな、
と反省しています。
これからは、子どもの気持ちを聞いてやろうと思って、
努力をしているのですが、なかなかうまく行きません。
自分の意見の言いたいところをぐっと抑えて、
できるだけ優しく「ゆうくんはどう思うの?」と聞いているのですが、
子どもは「わかんない」と答えるばかりです。
イライラして聞く気がしなくなってしまいます」

この二人のお母さんたちは、それぞれ、
自分の<子どもにに対する関わり方が変われば、子どもも変わるだろう>
という事を理解しています。
更に、<自分の関わり方がどう変わればよいのかも>わかっています。
けれども、はじめのお母さんは、
<口出ししてはいけないとわかっていても、口出ししてしまう>し、
あとのお母さんは、
<聞かなければいけないとわかっていても、聞く気がしなくなってしまう>のです。
両方のお母さんは、
<わかっているけど、できない>という事に悩んでいます。

■ホンネとタテマエが葛藤している■

お母さんたちの心のカラクリを理解する鍵は、
お母さんの中にあるホンネとタテマエの葛藤にあると考えられます。

先程の二人のお母さんを例にとれば、
初めのお母さんの中には、
<子どもを黙って見守りたい>というタテマエと
<子どもに口出ししたい>というホンネがある、と言う事ができるでしょう。
二人目のお母さんの中には、
<子どもの気持ちを聞いてやりたい>と言うタテマエと
<自分の考えを押しつけたい>というホンネがある、という事もできるでしょう。

このような、ホンネとタテマエが、お母さんの中で、激しく葛藤して、
お母さん自身を落ち着かなくさせているのです。

このような葛藤不安を抱えているお母さんが、
その解決を、本やほかの人のアドバイスなどに求めると、
そのお母さんの葛藤は、更に、複雑になっていきます。
というのは、そういう状態にあるお母さんは、自分の中の不安から、
どんな子育てのアドバイスも「〜しなくてはいけない」という
規範にかえてしまう事が多いからです。
お母さんの中には、子どもに対する葛藤不安がもともとあります。
その上に、更に自分を縛る規範がどんどん加わるのです。
葛藤はいっそう複雑になり、葛藤から引き起こされる不安は、更に強くなります。

■抑え込んだ思いは、必ずどこかに顔をだす■

それでは、ホンネとタテマエの葛藤の問題は、どう解決したらよいのでしょうか。

一つの解決方法は、どちらかを我慢して、抑え込んでしまう、という方法です。

再び、先程のお母さんたちの話しを例にとるならば、
初めのお母さんは、タテマエがホンネに押しきられて、
子どもに口出しをしています。
そして、二人目のお母さんは、ホンネをタテマエで抑え込んで、
子どもの気持ちを聞いてやろうとしています。
私たちが、普通、日常生活の中で行っている葛藤の解決方法は、
ほとんどがこのような方法なのではないでしょうか。

けれども、この方法は、最終的な解決方法にはなりません。
なぜなら、私たちの思いといるものは、
抑え込んでも抑え切れるものではないからです。
抑え込んだつもりでも、どこかで、あきらめ切れずに、
その思いが顔を出してしまうのです。

■その人なりの知恵が働いてくる■

ホンネとタテマエの葛藤のもう一つの解決方法は、
二つの思いを統合する道を探る、という方法です。

そのためには、まず、葛藤によって引き起こされる不安に気づき、
ちょっと立ち止まってみることです。

そして、ありのままの自分の気持ちを、
できるだけくわしく具体的に見つめて見る事が大切です。

更に、自分の中で、どのような気持ちと、どのような気持ちが
葛藤しているのかを、しっかりと自覚するのです。

自分の気持ちを具体的につきとめられないと、
自分が納得できる具体的な解決策は、見えてきません。
抽象的に捉えている間は、
<あれか、これか>という二者択一の発想しかできなくなってしまうのです。
逆に、二者択一の解決方法しか思いつかない時、というのは、
自分の気持ちを抽象的に捉えている時、と考えても良いでしょう。

まず、自分の関心を自分の心の動きに向けてみましょう。
そして、自分のありのままの気持ちを見つめてみましょう。
それをできるかぎり、具体的な日常会話の言葉で言い表してみましょう。
そうすると、自分の気持ちが落ち着いてきます。
自分の気持ちが落ち着いてくると、
どうしたらよいかという知恵もひとりでに湧いてくるのです。

セルフ・カウンセリングは、
誰でもが、このような事を実現できるように考えられた方法なのです。

私たちの心の中の、タテマエも、ホンネも、
かけがえのない自分自身の気持ちである事に変わりはありません。
どちらも、自分自身にとって大切な意味があります。
セルフ・カウンセリングをする事で、その両方を生かした解決方法が、
自分自身の中から自然と生まれてくるのです。

また、このことは、例にあげた親子関係ばかりでなく、
あらゆる人間関係においても言えることです。
上司と部下、夫と妻、先生と生徒、嫁と姑、看護婦と患者、など
様々な人間関係において、私たちの中の葛藤不安は、
相手とのコミュニケーションを妨げます。

けれども、それを克服する道は、私たち自身の中に潜んでいるのです。
私たちは誰でも、
自らの力で相手との新しい関わり方を創造してゆく事ができるのです。

セルフ・カウンセリングを実践することで、ひとりでも多くの方に、
そのことを実感して頂くことを、私は、心から願っています。(%王冠%)

☆こちらのセルフ・カウンセリング学会公式HPで詳しいご案内をしています(^^)/

http://www.self-c.net