秋の庭園公開が終わって、アンケート用紙を整理していたら、仲間がこんな感想文を見つけてくれました。
それは「観月亭に『クロードグラス』が置いてあり、嬉しく思いました。イギリスで18世紀頃、風景を鑑賞する流行があり、上流階級の人達が、美しい風景を求めて旅行しましたが、平地が多いイギリスでは絵になる風景(『ピクチャレス』と言いましたが)が少なく、日常の風景の一部を切り取って鑑賞しました。そのための道具が『クロードグラス』です。クロード(・ロラン)はフランスの名高い風景画家でした。
使い方は、風景に背を向けて、鏡に映して美しいところを切り取って鑑賞します。
鏡の使い方の説明があると一層良いと思いました。」というものでした。
これを読んで、正直びっくりしました。と同時になんとも言えない快哉を感じました。
やったー!という感じですね。
数年前、旧村川別荘市民ガイドの研修で、アウトドアの楽しみ方というカリキュラムがありました。インストラクターの方が、ポケットから小さな鏡を取り出して、それを目のすぐ下に持ってきて、その鏡に頭上の木々を映し出して、「こういう風景の楽しみ方があるのですよ」と教えてくれました。やってみると、青空をバックにした木々が、手元の鏡に逆さまに凝縮されて、手に取るように映し出されていました。
これを庭園公開で、来場者に勧めてみたら思った以上に好評で、要所々々のスタッフが使い方を説明して、「風景の切り取り」という新感覚の景観を、楽しんでもらうようになりました。
ある時、手賀沼のビュースポット「ほととぎす」の前庭で、車椅子の方々が垣根のために手賀沼を見られないということがありました。気の毒に思ったスタッフが機転で、車椅子を沼を背にするように置いて、前方上方に鏡をセットして、後ろ向きに垣根越しの手賀沼を眺めてもらいましたらこれもまた好評でした。こちらの方がクロードグラスの本当の使い方に近いですね。(その後日立さんが、ここに車イス用のミニ展望台を設置してくれました。)
鏡を通して、自分だけの「切り取った風景」をささやかに楽しんでいたら、それが実は18世紀後半のイギリスの湖水地方で流行していたとは、「してやったり」ですね。当時の鏡はやや凸面の鏡で実物が大英博物館に陳列されているといいます。フランス語から翻訳された「クロードグラス」という研究書もありました。
これからも、この我孫子版クロードグラスで、後ろ向きの風景も加えて、庭園公開をさらに楽しいものしていきましょう。説明書も用意したいと思います。
貴重な情報をお寄せくださったご来場者に感謝いたします。
※クロードグラスについては、ウエブサイトでいろいろな角度から紹介されています。
(会員:吉澤淳一)