南仏ママンの愛情表現 〜フランスの女性事情 その8〜

年末年始、私は日本に帰ってきた。一時帰国というやつである。
日本はもちろん故郷だし、会いたい友達や家族も待っているので楽しみに帰った(%笑う女%)

しかし、フランスを去るにあたり、心残りがひとつあった。
それはフランスでも屈指のグルメの時期を逃すことだ (%痛い女%)
おいしいものが何よりも大好きな私としてはもう、後ろ髪どころの話ではかった。
クリスマスに新年。
南仏の彼らが寒い冬をおいしい料理とワインで体も心も温めないはずはないではないか。
あぁ、今から考えても悔しい。南仏女性の手料理といったら! (%ショボ女%)

一昨年前の話をしよう。

家主のお宅に近所の人たちと共にクリスマスランチにお呼ばれしたときのことだ。
「ここは南仏、ランチは2時間はかかるよ。それに食べる量は北とは比べ物にならないから」とベルサイユ出身の彼が事前に念を押してくれる。
私たちはいつもより軽めの朝ごはんにしてお腹をすかせて12時にいそいそと出かけて行った。(%車%)

耳と鼻を赤くして寒い外から家に入ると、あたたかい空気と共に食欲をそそるにおいが充満している。 (%ニヤ女%)
まだメンバーがそろわず、マダムは私たちに食前酒にスナックを勧めてくれる。
香ばしいトーストパン各種オリーブパテなどが色とりどりにトレイに乗っかっている。ピザも色々だ。
食前酒はマダム特製のアーモンド酒 (%星%)
「もう少し、いかが」マダムの甘い誘いと黒光りしているオリーブが私に「ノン」と言わせるわけが無い。

しかしフランス人と同様に食べていては南仏長距離グルメの最終レースまで勝ち残れそうにも無い。
そうこうしている間に客人が揃い、本格の食事がスタートである (%笑う女%)
やはり最初はフォアグラ (%ハート%)
それに小ぶりのポテトが香ばしいガーリックとバージンオリーブオイルで味付けしてある。(%ハート%)(%ハート%)
ワインはムッシューが郊外に持つブドウ畑で取れた特製の赤だ(%ハート%)(%ハート%)(%ハート%)
われわれがお土産に持参した白ワインなど足元にも及ばない喉越しだ。

次には山で仕留めたという鹿の一種のお肉だ。
「背骨のあたりの肉、ここがうまいんだよ」とムッシューが切り分けてくれる。
その次には口に入れると溶けて無くなるようなマッシュポテトのオーブン焼き
ふんわり甘くておいしい (%音符1%)

料理が変わるたびにパンできれいにお皿をきれいにするのだが、このパンも否応なしにうまい。そんなこんなで毎回「もうちょっと」という気持ちをかろうじて押さえ、デザートまでの各種の料理をこなす。
マダムの特製クリスマス料理を最後まで食べないような無礼はできない。

イタリアの農家の話しに、料理自慢、はては日本まで話しは飛び、話題はワールドワイドに展開、ワインのボトルもどんどん空いていく。

妊婦の私は大きなお腹が更に大きくなり、背中はのけぞり、時計はすでに4時を回りやっとのことで、デザートである。(%王冠%)
手作りクッキーにお隣ドイツのマジパンチョコ、チョコレートケーキにメレンゲも、もう、駄目だ。(%ショック女%)

地元南仏の方々は平気な顔でコーヒーをすすっている。(%涙%)

「マナは妊婦なので長い間居ると疲れますから、そろそろ失礼します」と彼。
まだまだしゃべり続け、次の夕食について思案する南仏の巨人達を後に、2人ともが妊婦のようになり、部屋に着いたと同時にベットに倒れこんだのは言うまでも無い。

あふれんばかりの料理と愛情。
これこそが南仏ママンの愛なのである。
(%晴れ%)

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(※このエッセイは、「ウィメンズネット・こうべ」さんのニュースレターで連載されたものです。発行者の許可を得て転載しています。)
(まな)