訪問先には必ずその地域の実情に合わせてアレンジされた中間支援機能があり、サードセクターのソフト面のインフラストラクチュア整備が実践されていた。地域の限られた資源を有効活用し、中間支援機能の運営も目を輝かせた社会的起業家が担っていた。
日本では中間支援機能の重要性が全く認識されていない、当時の海外調査で最も大きな差を実感した部分である。もちろん、欧州における政府委託市場、米国における財団やコミュニティファンドはCB/NPOの重要な収入源であり、サードセクターの基盤整備という点においても重要である。しかし、それ以上に差を感じたのが中間支援機能であった。ちょうどその時、NPO法人宝塚NPOセンターが震災復興基金を財源とした兵庫県の委託事業「生きがいしごとサポートセンター」を受託することとなり、中間支援NPOのフルタイムスタッフとしてのキャリアが始まった。以来約3年半の間に、100以上の起業支援に関わり、500以上の起業相談を受けてきた。その経験から、日本にもユニークな社会的起業家やNPOのリーダーが数多く存在し、地域で抜け落ちている重要なNeedをサポートしていて、この層は決して欧米に見劣りしていない。しかしながら、彼らを支える中間支援機能は、社会サービスの選択肢を増やし、より豊かな社会を築こうとしている先進国のそれではない。
その最大の理由が、日本の中間支援機能はNPOのキャパシティビルディングに貢献できていないという点である。また、日本の社会経済システムでは、中間支援NPOが中間支援機能を担うしかないにも関わらず、中間支援NPOのキャパシティビルディングもままならない状況である。つまり、中間支援NPOのスタッフには、プログラムオフィサーと起業支援コンサルタントの両方の能力が求められるが、現在の日本の中間支援NPOでかかるスタッフを揃えられるところはごく僅かである。中間支援機能としては市レベルで少なくとも3〜5つの中間支援NPO、それもNPOのキャパシティビルディングを支援できる中間支援NPOが必要だろうが、それだけの中間支援機能を有している地域は日本に無い。中間支援NPOを軸としたNPO間のコラボレーション、そのコラボレーションを軸とした企業や行政も巻き込んだコラボレーション、コラボレーションがコラボレーションをよぶようなマルチステークホルダーが社会基盤として必要であり、その地域のソフト面の基盤を整備することで地域経営や地域再生の可能性を見出していく。そういう姿勢がこれからの日本の地域に求められている。
本章では、キャパシティビルディングをキーワードに、欧米と日本の中間支援機能の比較も行いながら、中間支援機能のあり方とサードセクターに関連する評価について考察していきたい。