外国人実習制度 低賃金労働の実態を改めよ(7月20日付・読売社説)
外国人の研修・技能実習生の法的保護を強化しようと、
7月から出入国管理・難民認定法の改正法が施行された。
だが、法改正は問題の先送りに過ぎないとの批判もある。
技能実習とは名ばかりで、
「奴隷労働」とさえ酷評された問題は改まるのか。
改正後も実態が変わらないようなら、
制度を存続させる意味がない。
現在の制度は、日本の進んだ技能や技術を習得し、
本国の産業発展の担い手となってもらおうと、
1989年に設けられた。
繊維や機械・金属、食料品、建設、農業、漁業などの分野で
最長3年間、毎年5万〜7万人規模で
外国の若者を受け入れている。
8割以上は中国人だ。
企業が単独で現地法人などの社員を受け入れる方式と、
中小企業団体や農業団体が受け入れ団体となり、
傘下の企業や農家で実習する団体監理型があるが、
圧倒的に問題が多いのは後者だ。
法改正の国会審議でも、
長時間労働や時給300円程度の低賃金に加え、
「本国の送り出し機関に
高額の違約金などを取られるため途中で辞められない」
「金もうけが目的の単純労働者が大半だ」と
いった現状が指摘された。
茨城県のメッキ加工会社の中国人実習生が
一昨年、31歳で突然死したケースも典型的だ。
労働基準監督署は過労死だったとして労災認定する方針だが、
安い賃金で月に100〜150時間の残業をさせられ、
休みは2日ほどしかなかったという。
全国の労基署が実習生の労働条件について指導した件数も、
2008年は2612件に上った。
国際貢献の理念とは、あまりに遠い。
要は日本人の働き手が見つからない業界が、
外国人を体よく使ってきたのではないのか。
法改正では、2年目からだった労働基準法や最低賃金法の適用を
1年目からとした。
受け入れ団体の傘下企業などに対する指導や監督の強化も盛り込まれた。
だが、これまでも労働関係の法令は無視されてきた。
受け入れ団体と傘下企業などは身内同然の場合が多い。
果たして、厳正な監督が期待できるのだろうか。
企業の倒産などで途中で帰国する実習生も多い。
最低限、健全経営でない企業には受け入れを禁じるよう措置すべきだった。
実習制度は、外国人の単純労働者を受け入れる抜け道になっている。
今後の外国人労働者の受け入れはどうあるべきか。
この点の論議を進めていくことも重要だ。
(2010年7月20日01時49分 読売新聞)