前々から気になっていた「足立区犯罪発生数1位」「足立区ひったくり1位」について、ちょっと調べてみました。資料は警視庁の「発生状況・統計」 内の数字です
警視庁では「発生状況・統計」として、平成11年からのデータを公表していますが、同ページにリンクをはるかたちで「犯罪発生マップ」「犯罪情報マップ」というのがあり、これが「足立区犯罪発生数1位」「ひったくり1位」の根拠になっているようです
しかし「犯罪発生マップ」では足立区はあんまり赤くないんですね(赤いといろいろな犯罪発生数が多い)。
それからそのおおもとになっている「発生状況・統計」の数字、例えば「第33表刑法犯の罪種別認知・検挙状況」などで見てもあまりピンときません
では何がマスコミやツイッター上をにぎわせているかというと、どうもこの「犯罪情報マップ」のようです。
「犯罪情報マップ」では東京都の区市町村単位で「全刑法犯」「ひったくり」「侵入窃盗」「車上ねらい」「自動車盗」「オートバイ盗」「自転車盗」「粗暴犯」の8つの項目における認知件数が参照できるようになっています。犯罪が多いところは赤く、少なくなるにつれて緑へ表現されます
この「マップ」で見ると確かに足立区は「全刑法犯」で1位、「ひったくり」でも1位、「車上ねらい」でも「オートバイ盗」でも1位で、とんでもなくキケンな区に見えます。おそらくこれが足立区=無法地帯みたいなツイートの連鎖の根拠になっているものと思われます
「ひったくり」の件数について見てみると、1位の足立区では198件、2位の江戸川区では194件、3位は世田谷区で150件です。警視庁の「発生状況・統計」でもこれを見てみようと思ってさがしたのですが、どうも見つかりません。というのは「ひったくり」は窃盗の一部なんですね
「発生状況・統計」では「窃盗犯」を「侵入窃盗」「非侵入窃盗」に分けています。このデータではそれほど足立区が突出しているように見えなかったのは、「犯罪情報マップ」のように「ひったくり」という項目を設けていないからなんですね
逆に「ひったくり」という項目を設けると、とたんに足立区は「犯罪帝国」のように見えてくるから不思議です。ところでこの「ひったくり」の刑法犯における割合なのですが、足立区の全刑法犯11086件のうち1.8%に過ぎません。
ところで犯罪といえば、新宿区はどうでしょう。新宿区は全刑法犯認知件数堂々2位の10976件。1位の足立区との差は110件です。ちなみに3位は江戸川区の10219件。4位は世田谷区10175件とつづきます。ところで新宿区の「ひったくり」は13位、58件に過ぎません
こうして見てくると、年間198件の「ひったくり」がなぜそんなにも大きなイメージを流通させる役割を果たせているのかが不思議になってきます。だって港区は足立区より年間100件以上も「粗暴犯」が起こっているのに「やっぱり港区だよ」とはなりませんよね
そもそも198件という規模を見てもわかるように、「ひったくり」の全刑法犯に占める割合は、足立区で1.8%、東京全域でも1.1%に過ぎない犯罪です。なぜこの「ひったくり」だけがクローズアップされ、その発生件数がたった4件差で1位の「足立区」が「やっぱり」となるのか
「犯罪情報マップ」の他の項目を見てもそうなんですね。「車上ねらい」とか「自動車盗」とか「自転車盗」「オートバイ盗」とか、「発生状況・統計」ではあっさり「窃盗犯(うち乗り物盗)」とまとめられている項目が事細かに分類され、足立区は軒並みその1位2位になっています
逆に「犯罪情報マップ」では「凶悪犯」や「知能犯」「風俗犯」「その他の刑法犯(占有離脱物横領、公務執行妨害、住居侵入、器物損壊等)」という項目がカットされています。項目を8つに分けてあるのになぜ「乗り物盗」をこんなに細かく分析し、例えば「粗暴犯」は一緒くたなのか
これはおそらく、「犯罪情報マップ」は防犯のための情報なので、身近な犯罪のみを情報として提供し、そのために乗り物盗に関する分類が細かくなったということなのではないかと思われます。しかしその「意図」はおそらくそういう風には「流通」していないのではないかと思われます

門脇篤