今月の一冊 Dambisa Moyo著

今月の一冊
話題の本や論文について紹介するレポートです。

『DEAD AID Why Aid Is Not Working and How There Is a Better Way for Africa.』
Dambisa Moyo著

 本書は、本年1月に出版されて以来、アフリカに対するAid(主に開発援助)に対する発言の過激さから欧米諸国のみならずアフリカでも多くのメディアに取り上げられている一冊です。また、著者Dambisa自身が、サブサハラアフリカの一国ザンビア出身のアフリカ人女性であり、オックスフォードで経済学の Ph.Dを取得、ゴールドマンサックスで8年間のキャリアを積み、世界銀行でもコンサルタントの経験を持つという華々しいキャリアの持ち主であることも、多くのメディアに取り上げられる理由のひとつかもしれません。
 彼女はAidが、アフリカ政府らにとっては‘easy’なお金であり、そうであることが彼らの堕落を招いていると指摘しています。その上で欧米諸国からのAidではなく、むしろ国内外の金融市場を通じて資金を自ら調達する必要性を唱えています。さらにそのプロセスを通じて、自らの信頼性を築く必要性から、アフリカ政府が自ら汚職から脱し透明性の獲得に努め、手元にある資金に最も相応しい配分をするようになっていくことを主張しています。
 Aidが効果的であるのか、そうでないのかという議論は、国際社会で常に議論されています。彼女の著書がその議論に一石を投じているとは言えますが、果たしてこれが本当にアフリカをよりよくするための方法なのかは、読者に判断が委ねられます。