猫のザラザラの舌で目が覚める。
ぼんやり目を開けると
飼い猫の”しんこ”がいて、僕を覗き込む。
時計はお昼の12時今日は久々に仕事がない。
いや、休みにしたかったので徹夜したのだ。
1階はすでに騒がしく「みんな来るの…早いなー…」
“しんこ”がニャーニャー呼ぶ
早くメシをよこせ と言っている。
タバコを一服。となりの机でまだ一人、寝ているアイツ。
「もう、結構あつまってるみたいよ…」
「…んー…い…すぐ いきます…」
たぶんまだ起きねえな。
そのとなりの机でもう一人、まだミシンを踏むあの子。
「…こんなに縫ったの…??」
「はいー、あーおなかすいたー ー ー ー」
「はいはい、3人とも起きたー??」
勢い良く戸があいてエプロン姿で覗き込むあの子。
「もぉー早く降りてきて、顔洗って、くどくどくど…」
「タバコ、すい終わってからでいい??」
「みんな待ってるから早くしてよー、私ここ掃除しとくからー」
2階の窓が開いて少し肌寒い、でも気持ちのいい風が吹き込んだ。
縁側から音楽が聞こえてくる。あの子の素敵な声とメロディ。
しかし
横のアイツが弾くギターは、間が悪い。
階段を降りると廊下で猫と遊んでいるあの子
こちらの猫は”チャヅケ”
台所ではアイツが音楽を語る。
朝から。熱く。
それをたぶんあんまり真剣に聴いていない
向い側で膝を抱えて座る笑顔のいいあの子。
料理をするあの子とアイツ。
後ろからみると大きさの差がすごい。
「あ 起きた、みんな早くに来過ぎやわ!」
「いま支度中だから、あっちいっててください」
僕は、縁側の音楽を聴きながら
料理の音を聞きながら音楽の話を聞きながら
終わっていない仕事を少し気にして
積み上げた座布団を枕に またちょっと横になる
天井が木目でなんだか小さい頃に戻ったような気になる。
「あ きたきた!」
縁側のふたりが言うと玄関のチャイムがなる
いつもオシャレなアイツとあの子。
テーブルをくっつけて つくる食卓
そして
お腹いっぱいたべて お腹が痛いほど笑う
誰一人ここに欠けちゃいけない。
ここに自分がいる意味を
みんながその胸のペンダントに持っている。
近くにいても離れていても
早足でも遠回りでも
うれしくても悲しくても
必ずそこに行き着くんだ
だってそのために出会ったんだから。