第1回認知行動療法勉強会報告

アズイットでは、「平成27年度歳末助けあい愛の持ち寄り運動」公募配分金により、社会性を身につけるための勉強会&自立のための調理実習として、全3回にわたって勉強会などを開催しています。

第1回目は認知行動療法勉強会として、2016年2月19日に宝塚西公民館において、講師にただしメンタルクリニック院長で精神科医の田中禎先生をお迎えして、ネガティブ思考になる自分との付 き合い方〜アドラーから学ぶ「思い込みからの脱却」〜という内容でお話ししていただきました。

タイトルにも出ているアドラーとは、オーストリアの精神科医であるアルフレッド・アドラーのことで、彼が創始し後継者たちが発展させた心理学の理 論、思想と治療技法の体系をアドラー心理学と呼びます。
アドラー心理学の思想的な特徴としては、「他者を支配しないで生きる決心をすること」「他者に関心を持って相手を援助しようとすること」などがあげられます。

ここからは勉強会で先生が話された中から、特に印象に残った事柄を紹介してみたいと思います。

自分との付き合い方というテーマにおいて、理想と現実の違い、そこから生じる不満についての考え方を話されました。
理想と現実の例として、「理想の私」と「現実の私」という例えをされましたが、「理想の私」とは、私の頭の中だけに存在する未だかつて地球上に存在したことのない空想上の人物を指し、「現実の私」とは、私の目の前に存在する、いくらいない!と念じてもまぎれもなく実在する人物を指します。
この「理想の私」と「現実の私」との差が「私の不満」になるわけです。
では、この「理想の私」に近づくには、どのように考えればよいのでしょうか。
理想が高すぎると人はやる気を失いますが、目標達成ができそうな理想だとやる気が起きます。
不満を少なくするためには「現実の私」のレベルを上げることでも対応できそうですが、「理想の私」のレベルを少し下げる方が容易いそうです。
目標が高すぎると感じるときは、手の届くところに目標を設定し、その目標をクリアしたらもう一段上の目標を設定する、というやり方が良いそうです。

続いて、意見と事実を区別するということについて話されました。
例としてコップの中に半分水が入ったものがある状態を見て、「コップに水が半分もある」が正解か「コップに水が半分しかない」が正解か、どちらと も正解か、どちらも不正解か尋ねられました。
正解はどちらも不正解なのですが、その理由としてどちらも「〜しかない」「〜もある」という、事実に対して意味づけをした「意見」にしか過ぎず、 正しいのは「半分ある」という事実のみなのだそうです。
大切なのは、事実に対して意味づけをしているうちに、思い込みをしていることを忘れがちであり、何が事実かをきちんと見極めることなのだそうです。

約2時間にわたるお話の中で印象に残った2点について紹介させていただきましたが、いずれもなるほどなあと納得のできる内容でした。
限られた時間の中ではアドラー心理学のすべてを学ぶことはできませんでしたが、非常に興味を持たせてくれた勉強会でした。
なお、アドラー心理学に興味を持たれた方は、アドラー心理学トーキングセミナー、続アドラー心理学トーキングセミナー(野田俊作著、星雲社)を読まれることをお勧めいたします。
いずれの書籍も絶版となっていますが、図書館などに蔵書としておいてあることが多いです。

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