今年の3月16日に
日本青年館で花組東京特別公演「舞姫」を観劇しました。
愛音羽麗(みわっち)さんの初主演作品です。
「舞姫」、良かったです。
まずオープニングが素晴らしい。
みわっちの男役の所作が美しい!
今回は時代が明治であることもあって、
宝塚がもともと歌舞伎をベースに洋楽との融合を目指した歴史を
感じさせるほど男役のみなさんの所作がとても美しかった。
今回はメガネ・デビューでもあり、生徒の美しさを改めて感じました。
特に黒沢中尉役のチアキ(白鳥かすが)が良かったです。
もちろんまっつ(未涼亜希)も凛々しい。
舞台装置もシンプルで良かった。
照明と花びらだけで同じセットが
べリルンの町から日本に変わるのですから。
話も良かったです。
チアキ演じる典型的な軍人官僚、
マメ(日向燦)演じる真面目な衛生学を学ぶ留学生、
みつる演じる閉塞的な日本を飛び出した芸術家
の3人を対比させ、
みつる(華形ひかる)演じる豊太郎が憧れを感じていた芸術家が
ドイツで夢破れ、故郷日本を思いながら客死してから
エリスと別れ、日本に帰国することを決意するまでの
たたみかけるような展開が素晴らしい。
宝塚特有の舞台の奥行きを存分に活用した心象風景の描写も最高!!
個人的には泣きませんでしたが、
他の人は号泣していました。
男性と女性の感じ方が違うのかな?
どうして私は「舞姫」で号泣できなかったのだろうか?
その理由を考えてみた。
みつる君演じる私費留学生の原が客死したシーンは泣けたけど
豊太郎とエリスの別れのシーンは泣けなかったのは、
私が原だからだ。
理想ばかりを追い求め、
強がりばかり言い、
自分を認めない世間が悪いと片意地を張る。
そして、最後には貧困から客死する。
その死に方がとても惨めだ。
捨てたと思った故郷日本を捨てきれず、
かゆを食べたい、里芋の煮っ転がしを食べたい、
日本に戻りたいと言いながら、死んで行く原。
彼とエリスの影響を受け、
世間の期待のままに太田豊太郎を演じることを止め、
自分の思うがままに生きることを決意し、
(と言っても生育環境の影響は排除できないのだけど)
免官処分まで受けた豊太郎も
原の惨めな最後を見て
エリスとの別れを決意し
また世間の期待のままに太田豊太郎を演じることを決める。
私は原だ。
私もそろそろ豊太郎にならないといけない。
5年前に元全共闘闘士の人から受けた忠告が身にしみる。
できれば、このまま原のまま、生きていけるならそうしたい。
原は原のまま、生きた。
でも、あまりにも死ぬのが早すぎた・・・
遅ればせながら、井上靖さんの現代語訳版を読みました。
黒沢中尉も岩井君も、そして原も出てこないのですね。
しかも、エリスは本当に妊娠しているし、
そのあとに精神の病になっている・・・
(現実は鴎外を追ってドイツ人女性が来日しているので
精神の病になっていたのかも怪しい・・・)
宝塚版はもともとエリスに心の病があり、
妊娠もその病による幻想となっている。
黒沢中尉や岩井君、原と豊太郎を対比させることによって
豊太郎の苦悩が伝わってくるシナリオだしね。
原作は確かにひどい話だなぁ。
でも、たかが20〜30頁の話をここまで
感動的な話にできるなんて植田景子さんは凄い!!
もっとも主演男役は最終的には共感を呼ばないといけない、
シナリオ先にありきではなく、生徒が先にありきなので、
それぞれの学年や技芸(シンガー系、ダンサー系、演技派など)
に応じた配役を考えなければならない、などなど
という宝塚のルールがこの名作を生んだとも言えるけど・・・