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突然の災害から人々を守る社会心理学のアプローチ
− 防災ゲームによるリスク・コミュニケーション −
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タグ:災害,土木技術者
[話題提供] : 京都大学防災研究所 准教授 矢守 克也 氏
[コーディネーター]: 神戸大学大学院 准教授 宮本仁志(FCC代表幹事)
[日時] : 平成21年1月27日(火) 18:30〜20:10
[場所] : 大阪府立女性総合センター(ドーンセンター)5階 セミナー室2
[参加費] : 無料
[参加者] : 20名
【企画の趣旨】
この夏、兵庫県神戸市、石川県金沢市、東京都豊島区、大阪府枚方市・寝屋川市、愛知県岡崎市、栃木県鹿沼市など全国各地において、短時間に、しかも突発的に、集中豪雨が発生しました。「ゲリラ豪雨」とマスコミに呼称されるこの突発的集中豪雨によって川や下水道などが増水し、神戸、豊島、鹿沼では人が亡くなる事態にまでいたりました。まさしく、突然に自然が牙をむき、猛然と人間社会に襲いかかるような水害であったと考えられます。
神戸の都賀川を例にとると、そこは河川管理者である行政と、水辺利用者である沿川市民の協働によって河川空間が整備され、様々な親水活動や環境学習のフィールドとして利用されています。この夏の都賀川の水難事故の背景には、地球規模の気候変動や都市域のヒートアイランド現象、市街化された流域での短時間の出水特性など、自然科学的な要素がクローズアップされていますが、その一方で、平水時、河川において親水活動を行うときの危機意識のもちかたなど、社会心理学的要素も大きく介在するように思われます.その意味で、この夏、頻発した突発的出水による水難事故は、市民や河川管理者に対して、都市域の河川空間整備に関してこれまでに想定されていなかった新たな諸課題を投げかけているようです。
このような水害に限らず、震災をはじめ突発的な災害が各地で頻発しています。地域の社会資本整備を担当するわたしたち土木技術者は、今後たびかさなることも懸念されるこれら突発的な災害に対して、どのような意識をもって対応していけばよいのでしょうか? また、ひとりの市民として、普段からどのような心構えで日々の生活を送っていけばよいのでしょうか?
今回のFCCサロンは、社会心理学をバックボーンにして防災に関する諸課題を精力的に研究されています矢守克也氏をお招きし、社会心理学の立場からひろく矢守先生のご研究をご紹介いただきました。サロンでは、防災に対する参加的なアプローチとして提案されている、防災ゲーム「クロスロード」を参加者とともに行い、みなさまには楽しみながら、社会心理学的観点からの防災を学んでいただきました。
【当日の内容】
今回のサロンでは、矢守克也先生の考案された防災ゲーム<クロスロード>(今回は簡易version)の例題を、サロン講演中に2〜3取り上げ、参加者とともにデモンストレーションしました。<クロスロード>は、災害時に必ず遭遇する答えのない様々な問題に対して、社会心理学のアプローチで問題解決の糸口を可視化する、コミュニケーション支援のツールだと考えられます。答えのない問題として、このたびは、1)地震発生時の自治体職員の選択(即時出勤/自宅待機)、2)地震時の消防隊員の判断(指令順守/とっさの緊急対応)、3)避難所での共同生活(周囲との協調/個人・家族を優先)、といった例題がだされました。(実際の問題は、簡単な状況付きの文章問題になっています。)
これらの2者択一の問題について、参加者はそれぞれ、yes・noに意味づけられた青・赤のカードをもち、みな一斉に、どちらかをあげて自身の判断を示します。何人かの参加者は、その場で選択の理由をゲームに参加するみんなに説明し、ディスカッションに入っていきます。今回はデモンストレーションでしたので、議論に移る前までを体験しました。これらの例題にみられるように、災害時には答えのでない、ジレンマやコンフリクトを伴う判断を断行しなければならない状況に多く遭遇します。
<クロスロード>は、阪神・淡路大震災の実話をもとに、最初に神戸編が編纂されたそうです。その後、このようなジレンマやコンフリクトを伴う問題は他にもいろいろあるということで、「市民編」、「要擁護者編」、「感染症編」、「東海地震編」などが、現在作成されているようです。<クロスロード>は、このような答えのない問題に対し、マニュアルで対応するのではなく、【その場その場でみんなで正解を作る】ための能力向上を目指した手法であるとのことです。いざというときの究極の判断のために、こういった防災ゲームで能力を高め、多様な視点や価値観への気づきと、それを踏まえた合意形成を誘導します。さらに、このような答えのない諸課題を【自分たちの問題に対して適用し、クロスロード方式で問題解決の糸口を学ぶ】活動も始まっているようです。
よく考えてみると、わたしたちの整備する社会資本は、合意を形成しながら進めていく課題が多く、必然的にジレンマやコンフリクトが伴います。このたびの社会心理学を基軸に展開されたサロンの内容は、そういった意味でも、防災のみならず土木の様々な仕事を進めていくうえで、参加者の方々に多くのヒントを与えたものと考えられます。 (なお、会告に示していました都賀川の話題は、矢守先生にはご用意いただいていたのですが、残念ながら時間上の都合で今回は省略されております。)
(%ニコ女%)(%ニコ男%)
当日の内容はPDFで参照できます。