〜土木の原点。社会的インフラストラクチャーをきちっと創り、守り、そして伝えていく。
小河保之 土木学会関西支部 支部長 (大阪府副知事) ご挨拶
本日、ご講演いただきます宇沢弘文先生におかれましては、本当にお忙しい中を東京からおいでいただきまして、ありがとうございます。私が大阪府で道路を担当しているときに先生がちょうど「自動車の社会的費用」という本を出されました。そのとき読んで、非常に感銘を受けたことが印象に残っています。経済的な用語が多くて難しい先生だと思ったのですが、先ほど話させてもらったら、いろいろなことを非常にわかりやすくしゃべっていただきまして、感激しているところでございます。
このFCCは、産・学・官協働の土木学会の中で、土木という枠を離れていろいろな分野の方,市民の方と話をするという、関西支部だけの取り組みでございます。本日、そういうFCC活動の中で、宇沢先生のご講演が聞けるということは非常に的を得たことだと思っております。
いま私は大阪府の副知事をしております。この1年の間に橋下徹知事に替わりまして、いろいろと大阪府も変わっていっております。個別のいろんな施策については、さまざまな議論がございますけれども、一番大きい変わり方は、物事を従来の延長上では絶対考えていかない、枠にとらわれないということです。まさにこのFCCと同じような感覚ですが、違った観点からものを考えてみる、議論してみるということで、府庁内部が非常に活性化しております。そういった意味で、大阪府は変わっていくのかなと思っています。
私は技術系なので、私の担当についてはやっぱりきちっと議論しています。特に、社会基盤整備の関連では、いわゆる土木、公共事業という言葉が最近いろんな形で逆風になっております。事業の仕方、途中で利権が絡んだりと、いろいろな問題が起こっているのも事実です。しかしながら我々は、やはりプライドを持ってというのは大げさかもしれませんが、私たちの生活が現在、このように裕福で非常に文化的な生活が送れているのは、先人がきちっと社会基盤を整備してきてくれたからでございます。今まで、きちっとしたものをしっかりと創ってきているからこそ、我々がその恩恵を受けているということです。したがって、我々もそれをきちっと維持管理して、後世に引き継いでいかなければならないという想いがあります。庁内でもいろいろ議論しています。その原点は、私たち土木というのは、やっぱりいいものをきちっと創って、残して、管理していくということだと考えています。
宇沢先生の社会的共通資本の考え方では、やはり自然環境、それから社会的インフラ、そしてもう1つは制度資本とのことです。最後のものは医療とか学校とか、ちょっとここは非常に新しい概念だと思います。この社会的共通資本といった意味でも、我々がやっている社会的インフラというものをきちっと創り、守り、伝えていかなければならないなと思っております。
技術屋として、我々はやっぱり「コンストラクション」、ものを作っていく、その喜びというのは当然持っていなきゃならない。しかしそれ以上に、「クリエーション」、創造していくことが大切になります。これは、いろんな制度をつくったり、いろんなやり方をしたり、そういうクリエーションの喜びをもっと見つけようということです。土木行政もどんどん地域へ出ていく、現場の、地域の人たちといろいろ接することをやってきております。
最後になりましたが、この講演が実り多いものとなりますことを祈念いたしまして、私の開会の挨拶とさせていただきます。宇沢先生、本日はどうもありがとうございます。