第5回 FCCサロン 「どうしてできない!LRT」Ⅱ

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「どうしてできない!LRT」Ⅱ

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タグ:交通,まちづくり,国際,環境

[コーディネーター] : 兵庫県 県土整備部 県土企画局 交通政策課 本田 豊
[パネリスト]
・路面電車と都市の未来を考える会/RACDA 会長 岡 将男
・都市交通研究家 服部 重敬
・兵庫県 県土整備部 県土企画局 交通政策課 本田 豊
[特別ゲスト]
フランス・セマリー社 副社長(マーケッティング・広報担当) ソフィー・ぺリヤシャルラーズ

[日時] : 平成16年1月23日(金)18:30〜20:30
[場所] : 新阪急ビル12階 スカイルーム
[参加費] : 無料

【企画の趣旨】
平成15年10月10日の第3回FCCサロンでは,スペシャルトーク「どうしてできない!LRT」を開催し,123名のご参加をいただき,大盛況のうちに終わりました。しかしながら,90分という時間制約のため,「LRTがどうしてできないのか」については,多少なりとも議論できたものの,「どうすればLRTの導入ができるのか」について議論するだけの時間がありませんでした。
今回,参加者からのご要望等を踏まえ,第5回FCCサロンではスペシャルトーク第2弾「どうしてできない!LRT」パートⅡと題し,岡将男氏と服部重敬氏を再度お迎えして,10月10日に行った議論を引き継ぎ,国内でどうすればLRTが導入できるのかについて話題提供することとしました。そして,実際に欧州各地でLRT導入に携わってきたセマリー社のソフィー・ぺリヤシャルラーズ副社長を特別ゲストとしてお迎えし,会場の参加者との議論も交えながら,再度「どうすればLRTの導入ができるのか」について考えることとしました。

【当日の内容】
参加者数: 145名(パネリストを含む)
当日の内容はPDFで参照出来ます。

第5回FCCサロンは,下記のプログラムにしたがって進められました。

(1)日本と世界の路面電車の動向/服部 重敬
(2)岡山市におけるLRT導入に向けた取り組み/岡 将男
(3)行政からみたLRT導入への課題/本田 豊
(4)どのようにしてLRTを導入すればいいのか/服部 重敬・岡 将男
(5)LRTを導入するには何が必要か/本田 豊
(6)会場との議論

■ 会場との質疑・応答
(1)講師への質疑・応答
Q1.行政(市長)のトップダウンでLRT導入が打ち出されたときに,組織としてはどう対応すべきだと思うか。また,バランス重視の行政では,なかなか交通の専門家を養成しようとしても難しい面があると思うが,どういう形でそれをクリアすればよいのだろうか。
A1.岡山市では,市長のトップダウンでLRT導入を打ち出すことができなくもなかったが,導入した結果大赤字になる可能性があったため,打ち出すまでには至らなかった。また,行政内の交通の専門家養成という点については,行政に専門家を求めるのは無理だと思うので,その代わりに市民団体がその一翼を担うという形で取り組んでいかなければダメだと考える。
Q2.LRTが導入できない理由の一つに,警察が交通管理の権限を持っているからということが挙げられると思っているが,地方分権を進めて市長の判断で交通規制を行えるようにすればいいのではないかということについて,どう思われるか。
A2.交通警察が市民のもとにないことは事実だが,国家警察を市民が動かすのにはさすがに無理がある。一方で,センスのいい県警本部長が来れば,考え方がパッと変わるというのが警察の世界だと思うので,各地で地道な活動を続けていく中でチャンスを見つけるといった取り組みでがんばることが大切ではないかと思っている。
なぜ警察が交通規制を嫌がるのかというと,道路利用者からのクレームに対して,最も負担がかかるのが末端の警察官だからである。警察にクレームがこないようにするためには,交通規制の必要性を住民に十分理解してもらうしかないのではないか。たとえば,路面電車の通行帯の確保のために,最もネックとなっているのが違法駐車の問題であるが,長崎市や金沢市では違法駐車が非常に少ない。これは,やはり警察による交通規制に対して,両市とも住民の意識が高いことが理由ではないかと思われる。
Q3.公共交通の信用乗車を実施する方法は何かないだろうか。
A3.信用乗車は,ICカードでやっていくとか,バスカードでやっていくことから取り組むことが大切であり,現状ですぐに信用乗車システムが導入できるかというと,非常に難しいと思う。なぜなら,事業者は信用乗車システムの導入によって赤字になることを怖がっているからである。したがって,直接事業者に対する運賃補填でなくても,他のことで事業者を補助できる仕組みを考えることができないかと思っている。
信用乗車システムの導入ばかりを気にしているとLRTの本質論を見失ってしまうので,まず進めるべきはLRT導入であり,信用乗車にこだわる必要はないのではないかと思っている。

(2)仏・セマリー社への質疑・応答
Q4.LRTのコンサルティングはビジネスとして成り立つと思われるか。
A4.コンサルタント会社といっても,セマリーのような会社は運輸システム全体の導入監理業務を行う能力があり,二重の意味で優位性を持っている。このような能力,権威を有する会社にコンサルタント業務を依頼することは,種々なレベルで保証が得られるということになる。調査にはしっかりした裏付けがあり,現実的である。経験とグローバルなヴィジョンを有するコンサルタントは,それぞれの段階におけるエンジニアリング業務分野における様々な要素のつながり,相互関係を完全に把握しており,エンジニアリング業務分野における知識経験工事を適切に監理し,所定の工期に引き渡すことを可能にする。セマリー社が行う調査は,達成した事業同様にしっかりした実績として役立っている。
また,ヨーロッパにおいては,知的財産権の価値がよく認知されていることから,業務に見合った対価が得られることも大きな助けになっている。
Q5.日本のLRTの取り組みに対する客観的な評価をいただきたい。
A5.日本における状況をよく理解していないので,フランスにおけるコンサルタントとしてのアプローチについて述べるなら,あらゆる交通システムの導入にはアップストリームの徹底した調査が必要である。全ての前提条件を真面目に分析することによってのみ,この問題を解決することができると思っている。通常,専門家チームによる調査は一年足らずで行うことができ,専門家チームは交通経済と関連する法制度や制度上の問題と組み立てる専門家をリーダーとし,アーバンアーキテクト,及びシステム,車両,各種機器,土木のほか,地元の課題に通じたその国の専門家たちによって構成されている。
セマリー社は,欧州各地でこのようにして調査を行ってきた。また,これまでの知識と経験をベースに,戦略調査,フィージビリティースタディー,予備調査,実施事前調査などを行い,LRTの導入を支援してきた。現在,世界で総延長45km のLRTプロジェクトの建設工事が地元業者によって着々と進められている。

■ おわりに
今回のサロンは,前回のサロンが90分という時間制約があったため,再度120分という時間をいただいたお陰で,かなり深い議論ができたように思います。
また,サロンの後は,場所を移して懇親会も盛大に行われ,フランス・セマリー社のソフィー・ぺリヤシャルラーズ副社長のほか,フランス総領事館のPaul de OLIVEIRA商務参事官なども交え,約40名のご参加による国際色豊かな懇親会となりました。参加者同士による有意義な意見交換会の場になり,参加者の皆さんにはとても好評でした。
最後になりますが,二度にわたるサロンでご講演いただいた講師両名に深く感謝いたしますとともに,有意義な機会を与えていただいたFCCメンバーの皆さまに感謝申し上げたいと思います。