今年度のFCCフォーラムでご講演いただきたい候補のお一人である宇沢弘文さんですが,個人的には,昔から一度生のお話を聞きたいと思っていました。
同志社大学社会的共通資本研究センター長の宇沢弘文さんが近年提唱する「社会的共通資本」の考え方は,「公共」を考える上で非常に役にたつと思います。
社会的共通資本とは,ひとつの国ないし特定の地域に住むすべての人々が,豊かな経済生活を営み,優れた文化を展開し,人間的に魅力のある社会を持続的・安定的に維持することを可能にするような自然環境や社会的装置を意味します。(「21世紀の都市を考える」(宇沢弘文・編著)より)
また,宇沢先生によれば,社会的共通資本としての都市は,「多くの人々がお互いに密接な関係を持つことによって,文化の創造,維持を図っていく場である」とされています。
「社会的共通資本」の入門書しては,既にご紹介いただいた岩波新書の『社会的共通資本』がよいと思います。新書なので,比較的手早く読むことができます。
でも,私のお薦めは,『21世紀の都市を考える 社会的共通資本としての都市2』です。
ちょっと値段が高いので,私は図書館で本を借りて読みましたが,宇沢先生以外の執筆者の顔ぶれもなかなかですし,中身が非常に濃い内容です。
目次をあげておきたいと思いますので,ぜひご一読ください。
★宇沢弘文・國則守生・内山勝久 編
『21世紀の都市を考える 社会的共通資本としての都市2』
Economic Affairs No.8,東京大学出版会,2003年,3,780円
【目次】
プロローグ(宇沢弘文)
1 社会的共通資本としての都市(宇沢弘文)
2 ヨーロッパの都市計画から学ぶ(伊藤 滋)
3 都市の成長管理(原科幸彦)
4 地方分権と都市再生(神野直彦)
5 教育の場としての都市(間宮陽介)
6 文化としての都市の緑地(石川幹子)
7 観光学的都市の理念(岡本伸之)
8 熟練の集積と地域社会(柳沼 寿)
9 交通と都市環境の保全(國則守生)
10 都市の温暖化(内山勝久)
エピローグ(宇沢弘文・國則守生・内山勝久)0
★宇沢弘文・著
『社会的共通資本』(岩波新書),岩波書店,2000年,819円
書評はこちら。
ついでに個人的には,1974年に宇沢先生が書かれた著書『自動車の社会的費用』を読んで,自分自身が大きな影響を受けました。
とにかく,すごい人だと思います。
★宇沢弘文・著
『自動車の社会的費用』(岩波新書),岩波書店,1974年,735円