万葉集の最後の歌が作られて1250年ということで、標記
講座が、平成21年11月1日(日)に兵庫県民会館において
行われました。
講師は、黒川行信氏(元神戸高校校長)でした。
万葉集と言えば、奈良や飛鳥のイメージがありますが、都と
地方(中国・四国・九州)を行き交う人々も多く、交通の要衝で
あった阪神間の歌も数多く残されているとか。
今回はこのような中から、石屋川にある『処女塚』にまつわる
高橋蟲麻呂の長歌が紹介されました。
プロローグだけを記しますと、『葦屋の 菟原処女の 八歳子の 片生ひの時ゆ 小放りに 髪たくまでに 並び居る 家にも見えず 虚木綿の 籠りて居れば 見てしかと いぶせむ時の 垣ほなす 人の問ふ時・・・・・』とあり、これを要約しますと、「この地方の美少女に、千沼壮士(大阪の青年)と菟原壮士(地元の青年)が恋焦がれてプロポーズをするも、娘はどちらも立派な青年で1人を選ぶことが出来ず、入水自殺をしてしまいます。
これを知った大阪の青年が、後を追って命を絶ち、残された地元の青年もこれを悔しがって、後追い自殺をしてしまいます。
地元ではこれを哀れみ、娘のお墓を中央に、その東西に各々の青年のお墓を建てて、菩提を弔ったという歌だそうです。
4500首もある万葉集の中に、阪神間を舞台にしたこのような悲恋の歌があったとは驚きでした。