太宰治の作品を語る

日 時:平成21年12月22日(火)
場 所:西宮中央公民館
講 師:細川正義氏(関西学院大学副学長)
 太宰の生誕100年を記念して、標記の講座が催されました。
 今回は、妻と画学生の不倫を知り、その衝撃で水上村谷川温泉
に行き心中を図ったが未遂に終わった直後から、第2次世界大戦
終結頃までの、いわば太宰の中期における作品の紹介でした。
 たとえば、下駄屋の娘が5才年下の学生に恋をし、彼へのプレゼ
ントのために盗みをする(妻に対する批判?)という「灯篭」に始まり、1年前の自殺未遂を素材にしたと思われる「姥捨」、また井伏鱒二と下宿をした御坂峠での富士山に対する過去の回想をベースにした「富嶽百景」、そして有明淑さんの日記を参考に少女の思春期の心情の困惑を描いた「女生徒」、さらに35年前の日露戦争を時代背景とした、18才の姉と16才の病弱な妹とその父親の虚構を筆にした「葉桜と魔笛」等々でした。
 そして”信じることと信じられること” すなわち、人間の信頼をテーマにした「走れメロス」の解説もありました。
 最後に、ギリシャ神話から題材をとった「パンドラの匣」の紹介があり、主人公が結核という病から生まれ変わる物語の話しをされ、太宰も生まれ変わったのか(?)と結ばれました。
 こうして作品を見ていきますと、太宰は生きていくうえの基本的なものを小説の中に残したのではと感じたしだいです。