晴れた日には「異邦人」を読もう

日 時 平成22年10月2日(土)
場 所 関西学院大学
講 師 東浦弘樹氏(関西学院大学教授)
 カミユ没後50年を記念して、彼の代表作「異邦人」について
解説をいただきました。
 「異邦人」は、第1部は母親の死からアラブ人殺害までの17
日間の出来事を、第2部は逮捕勾留から死刑直前までの11カ
月間を描いています。
 第1部では、主人公ムルソー(白人)が友人レイモンの愛人の兄(アラブ人)をうらみもないのにピストルで殺害してしまいます。
 アラブ人はナイフを所持していたため、正当防衛を主張できましたが、彼はしませんでした。
 第2部で検事はアラブ人の殺害事件であるにもかかわらず、尋問は母親の死に集中し、主人公が母親の年齢を知らなかった、葬儀で母親の顔を見ようとしなかった、棺の前でタバコを吸った等々を取上げ、「人間の感情を持たない怪物」と表して結局死刑の宣告をされてしまいます。
 私達もそうですが、ある葬儀に行けば本当に悲しくなくても悲しい顔をして見せますが、主人公はただ正直なだけだったのでしょう。
 この「異邦人」が私達に突きつけたことは、人間に演技(嘘)を強いる社会、演技(嘘)を拒む人間を排除しようとする社会を批判したかったのではないでしょうか。
 もっとも、皆が真正直に生きたらそれはそれで住みにくい社会だとは思いますが・・・。
 主人公は死刑の直前に、「僕は幸福だったし、いまもそうだ。」というセリフがありますが、これで彼は「異邦人」から「殉教者」になったと言えるかと思います。