日 時 平成22年10月15日(金)
場 所 池田泉州銀行
講 師 市瀬雅之氏(梅花女子大学教授)
日本最古の和歌集である「万葉集」につきましては、ともすれ
ば名歌ばかりが脚光をあびていますが、今回は日常の暮らしに
沿った和歌の紹介がありました。
まずは昨今の野菜の高値を反映して「まつたけ」にちなんだも
ので、「高松の この峰も狭に 笠立てて 満ち盛りたる 秋の香
の良さ」の紹介でした。
これは「高松のこの峰もせまいとばかりに笠を立てて、満ちあふれている秋の香りのなんと素敵なことよ。」という意味で、主はまつたけではなく、秋の香りを詠ったものです。
なお万葉仮名では、「高松之 此峯迫尓 笠立而 盈盛有 秋香乃吉者」と書くそうです。
当時の貴族は贅沢で夏でも「氷」を食せますし、ましてや「あわび」や「まつたけ」等はさほど珍しくもなかった由にて、万葉集でまつたけを詠ったものはこれ一首のみだそうです。
またトイレの和歌もあり、「からたちの 茨刈り除け 倉建てむ 屎遠くまれ 櫛作る刀自」というのがあり、「カラタチのいばらを刈り除いて倉を建てる。だから屎は遠くへ行ってしなさい櫛作るおばさん。」という意味で、日本の貴族の館には川から水が引き込まれていて、それに板をわたして用を足していたとかです。(天然の水洗便所)
その他上司にごまをするものや、嘲笑うもの等々、二十首近い和歌をご紹介いただきました。
因みに「万葉集」は、全20巻・4500首にものぼるそうですが、実にいろいろな和歌が詠み込まれているものですね。