万葉のアヤメグサ

日 時 平成23年3月24日(木)
場 所 甲東公民館
講 師 山内英正氏(甲陽学院高校)
 万葉集に詠われている「アヤメグサ」とは、サトイモ科の
植物で現在で言う「菖蒲(ショウブ)」のことで、現在の「ア
ヤメ」はアヤメ科の植物の「花菖蒲」を指します。
 因みに、アヤメとは綾のある模様の意味だそうです。
 万葉集では、アヤメグサを「菖蒲、蒲、安夜女具佐、安夜
賣具佐・・・」等々と書かれていて、12首あると言われています。
 万葉時代の菖蒲は、5月5日の節句に菖蒲湯にして入ったり、輪のように編んで身につけて無病息災を願い、邪気を祓うことに用いられていたようです。
 推古天皇も、天智天皇も薬狩りと称して、薬草として採取したとする記録もあるとのこと。
 さて万葉集では大伴家持がほととぎすを題材に、「ほととぎす 待てど来鳴かず 蒲(アヤメグサ) 玉に貫く日を いまだ遠みか」と詠い、読人知らずですが、「ほととぎす 厭ふ時なし 菖蒲(アヤメグサ) 縵にせむ日 此ゆ鳴き渡れ」(卷十:1955)とあります。
 しかし、これと全く同じ歌が田辺史福麻呂(橘諸兄の家来)によって、「ほととぎす 厭ふ時なし 安夜賣具佐(アヤメグサ) 縵にせむ日 此ゆ鳴き渡れ」(卷十八:4035)があり、漢字が違うだけで存在します。
 また家持が越中に赴任していた時に、白玉(能登の真珠)を詠った歌にもアヤメグサが出てきます。
 すなわち、「白玉を 包みて遣らば 安夜女具佐(アヤメグサ) 花橘に 合へも貫くがね」と京に留守する妻女宛に送っています。(写真:ネット)