万葉集の中の大王

日 時 平成23年5月14日(土)
場 所 大社公民館
講 師 山内英正氏(甲陽学院高校)
 万葉集は「一般庶民から天皇まで」の歌が編纂されています。
 今回の講座は、卷一〜二における大王(おほぎみ)すなわち
天皇(すめらみこと→てんのう)に焦点を当てたものでした。
 万葉集を編修するに際し、その権威を示すためかスタートに
伝承歌を採用しています。
 すなわち、卷一のはじめには勇猛な雄略天皇(第21代)を、卷二では仁政の仁徳天皇(第16代)の磐姫皇后を持ってきています。
 たとえば前者の歌は「こもよ み籠持ち ふくしもよ みぶくし持ち この岡に 菜摘ます児 家告らせ 名告らさね・・・(略)」ですが、実際はご本人が詠んだものではないようです。
 そしていよいよ伝承から歴史時代に入り、舒明天皇(第34代:中大兄皇子で後の天智天皇、大海人皇子で後の天武天皇の父)、皇極天皇(第35代:舒明天皇の妃で中大兄皇子、大海人皇子の母)・斉明天皇(第37代:重祚)等の歌が紹介されましたが、これも実作であったのか、または御言持ち宮廷歌人によるものなのか不明なものもある由です。
 因みに御言持ち宮廷歌人とは、天皇の命により又は天皇に代ってその御心を詠む歌人のことで、額田王(大海人皇子の妃で、十市皇女の母)がつとに有名です。
 講座の最後は、大化改新の立役者である天智天皇(第38代)で、「香具山(男山)は 畝傍(女山)ををして 耳梨(男山)と 相争ひき 神代より かくにあるらし 古も 然あれこそ うつせみも 妻を争ふらしき」と男女の三角関係を詠んだものでした。