阪神間の万葉

日 時 平成29年10月3日(火)13時30分〜15時
 故・犬養孝先生の思い出話からセミナーは始まりました。
 犬養先生は万葉集の研究者であり、文化功労者であった人で、
同氏の筆による志貴皇子の歌(写真の掛軸)が紹介されました。
 それは「石走る 垂見の上の さわらびの 萌え出づる春に
なりにけるかも」(水の流れている所にわらびがなっている、
ようやく春が来たようだ。)で、志貴皇子は天智天皇の皇子であり
平安遷都した桓武天皇の祖父であって歴史的には要の人です。
 犬養先生は大学教授時代にはいつも新入生に対し、この歌から授業を始めた由にて、春に大学に入学し学問を志した初心をこれからもずっと忘れないでいてほしいというメッセージが込められていたのだとか。
 今ひとつはやはり犬養先生の筆による歌(写真の色紙)で、大伴家持の「春の園 紅にほふ 桃の花 下照る道に 出で立つ娘子」(自宅に春がやって来て色鮮やかに輝いている。その中でも桃の花がひときわすばらしく道までもが輝いている。そこに美しい乙女が立っている。<樹下美人を詠む>)です。
 この歌は現高岡市で詠まれたものですが、その歌碑が西田公園万葉苑(西宮市西田町六)にあります。
 西田公園には山・野・都ゾーンがあり、万葉植物が七十二種と万葉歌碑が四基ある由。
 その他阪神間の「名次山」「角の松原」「武庫川」等を詠んだ「我妹子に 猪名野は見せつ 名次山 角の松原 いつか示さむ」や「武庫川の 水脈を早みと 赤駒の 足がくたぎちに 濡れにけるかも」他、数首を解説していただきました。