阪神ゆかりの文学を読む

日 時 平成29年10月10日(火)13時30分〜15時30分
 芦屋市在住の作家・小川洋子氏の「ミーナの行進」に焦点を
当てたセミナーでした。
 彼女は、この小説で谷崎潤一郎賞を受賞した他、芥川賞、
読売文学賞、本屋大賞等々も受賞しております。
 この小説は阪急芦屋川駅の北西にあるスパニッシュ様式の
洋館に住む二人の少女(ミーナとトモコ)と家族の物語です。
 内容は、トモコ(中1)が経済的事情により伯母夫婦に預けら
れることになり、岡山の田舎町から芦屋にやって来ると、そこは広大な敷地の洋館でした。
 そこには従妹のミーナ(小6の美少女で喘息持ち)がいてたちまち打ち解け、少女から大人へ変わっていく時間を共に過ごすことになります。
 平和と豊かさに満ちているかに思われたこの家にも、実はざわざわとするものがありました。
 伯父さんはどうも浮気をしているようで、家には時々しか帰ってこないし、伯母さんは自分の部屋でいつも一人でタバコを吸いお酒を飲む日々で、やがて破綻がくるのか妥協か、不透明な状態が続いています。
 ミーナ(本名:美奈子)は喘息のためほとんど外出せず専らマッチ箱を集めていましたが、やがてトモコが岡山へ帰る日がやって来た時、大切なコレクションのマッチ箱の中から2箱プレゼントします。
 このような経緯を大人になったトモコが過去を振り返って語るのがこの小説ですが、作者が伝えたかったことは、「子供の頃に体験したピュアな懐かしさ」だったようです。(因みにこの家庭は後に修復されます)