日 時 平成24年3月16日(金)
場 所 夙川公民館
講 師 山内英正氏(甲陽学院高校)
万葉集と聞けば「優雅」「優美」等の言葉が浮かびますが、
本日ご紹介いただきました歌はそのような言葉とはほど遠い
当時の天災・人災を読み込んだものでした。
すなわち、万葉人の無常観をはじめ行路病者・水難者・
過労自殺・内乱・外征・旱害・伝染病・火山爆発・地震・津波
等々をモチーフにし、人の悲しみを悼む挽歌です。
たとえば、無常観としましては「高山と 海とこそば 山ながら かくも現しく 海ながら 然真ならめ 人は花ものそ うつせみ世人」(山も海も変わらないが、命ある人間は花のように最後ははかないものだ。)があります。
また、役人の過労死を詠んだ歌としては、「いつしかと 待つらむ妹に 玉梓の 言だに告げず 去にし君かも」(いつ帰ってくるかと待っている奥さんに、何の連絡もせず自殺してしまったあなたよ。)がありました。
そして、天災(日照り続き)の歌はかの大伴家持が、「この見ゆる 雲ほびこりて との曇り 雨も降らぬか 心足らひに」(今見えている雲よ、一面に曇って私が満足のいくまで雨を降らしてください。)と儀式ではなく、言葉で懇願しています。
万葉集にはロマンチックな恋歌の影に、このような挽歌があったことを再認識いたしました。