日 時 平成30年8月9日(木)14時〜15時30分
三島由紀夫の能楽集の中から、「卒塔婆小町」のご紹介を
していただきました。
三島は、本名を「平岡公威」と言い、大正14年生まれで、
学習院〜東京大学を出て、大蔵省に勤務するも、昭和23年
からは作家活動に専念しています。
今回の作品は能楽の「卒塔婆小町」(作者:観阿弥、脚色;
世阿弥)を彼なりに現代的にアレンジしたものです。
原典では老婆(小野小町)と高僧の問答で始まり、僧がなぜあなたは出家しないのですかと問うと、老婆は出家は姿でするものではなく心でするものと答え、「極楽の 内ならばこそ 悪しからめ そとは何かは 苦しかるべき」と詠みます。
三島の作品では、舞台を現代とし、若き詩人と老婆(小野小町)の話しに置き換わっています。
詩人と老婆は、老婆の80年前の話し(原典と同じように、小野小町と深草の少将の伝説である、少将は99夜で病に倒れ、百夜通いを実行せずに死ぬ・・・を現代化し)の明治時代の鹿鳴館に変身します。
そして詩人は次第に恍惚にとらわれてとうとう老婆の制止を振り切って、禁断の言葉を吐いてしまう。
詩人はたった一瞬の至福のために死んでゆき、命と引き換えに官能を得ます。
最後は、原典では老婆が仏道に入りますが、この三島の作品では、老婆(小町)はまたさらに100年待つ運命となっています。