万葉の馬酔木

日 時 平成24年3月23日(金)
場 所 甲東公民館
講 師 山内英正氏(甲陽学院高校)
 万葉集に馬酔木(アシビ)を詠んだ歌は10首あるとのことです。
 アシビはつつじ科の植物で、白い花を多く咲かせる早春の花で、
万葉人はこの白さに感動をおぼえるとか。
 アシビの歌の紹介には、「大津皇子事件」がキーワードである由
 すなわち、大津皇子は天武天皇と太田皇女(天智天皇の皇女)
との間に生まれ、皇位継承順位は草壁皇子(天武天皇と持統天皇との間に生まれる)に次いで第2位でしたが、天武天皇の崩御後すぐに謀反の罪をきせられて24才の若さで処刑されてしまいます。
 そこで屍を二上山に葬られる時に、姉の大伯皇女が哀傷して作った歌の紹介です。
 「磯の上に 生ふるあしびを 手折らめど 見すべき君が ありといわなくに」(山の岩場に生えているアシビを折ってみたけれど、見せるべき弟はもういない。)があり、見事にアシビが歌いこまれています。
 ただ大津皇子は10月に処刑されていますので、その季節にはアシビは咲いていないため、おそらく仮葬があって翌年の春に本葬されたのではないかと推測されます。
 大津皇子は謀反人(持統天皇の陰謀説もありますが?)のため、書物には詳しく書かれていませんが、万葉集から前述のことがわかります。
 歴史書の欠落を、万葉集が補ったとも言えます。(写真は講習会場)