バッハとその時代

日 時 平成24年6月8日(金)
場 所 西宮大学交流センター
講 師 宮下朋樹氏(武庫川女子大学講師)
 学校の音楽室に入ると必ずヴェートーヴェンやモーツアルトと
並んでその肖像画が掛けられているのがバッハです。
 西洋音楽の歴史は、ローマ・カトリック教会のラテン語による
単旋律のグレゴリオ聖歌からだと言われています。
 そのため歌詞の内容を音楽で表現しようという概念があり、
たとえばレクイエム(死者へのミサ曲)は、最後の審判の日の情景を歌っているのだとか。
 バッハが活躍したのはバロックと呼ばれる時代ですが、このバロックとは「いびつな真珠」を意味するポルトガル語で、音楽もまた絵画と同じように、均整よりも不均整、調和よりも過剰、平穏よりも躍動感、静に対する動、均一に対する対比・・・が特徴になってきます。
 これは音楽そのものが、声楽中心から器楽中心に移行する中で、ピアノ(弱い音)とフォルテ(強い音)のコントラストが生まれたり、協和音の響きが導入されたりしたことによる側面もありました。
 また、音楽の中にドラマの原理も追及され、バッハのたいへん有名な「マタイ受難曲」は正にキリストをめぐるドラマで、この作品全体で最も劇的な瞬間のひとつ<最後の晩餐>では、イエスが「お前たちに告げよう、この中のひとりが私を売るだろう。」と言った時、弟子たちは「主よ、私がですか?」という旋律が11回繰り返されますが、これはユダ以外の弟子が一度ずつ聞くからに外ありません。