万葉の紅(くれなゐ)

日 時 平成25年3月25日(月)
場 所 甲東公民館
講 師 山内英正氏(甲陽学院教諭)
 万葉集に「くれなゐ」は29首詠われている由にて、紅・呉藍・
久礼奈為等と書かれており、語源は「呉の藍(くれのあゐ)→
くれあゐ→くれなゐ」だとか。
 呉は中国の国名にあることから、中国から古墳時代に入って
きたと推測されています。(纏向遺跡から紅花の花粉が出土)
 さてこの「くれなゐ」を詠んだ大伴家持の短歌に、「紅は うつろふものそ 橡の なれにし衣に なほ及かめやも」(紅色はいづれあせていくが、一般に着用している茶系統は目立たないが飽きることはなく、これには及ばない。)と直訳出来ますが、この歌はそんな単純なものではなかったようです。
 すなわち、家持が遊女におぼれて妻を顧みない部下に対して詠んだものだそうで、紅を遊女に、橡を妻にたとえているとのことで、(着飾って美しい遊女もやがて色あせてくるものだから、目をさまして妻をもっと大事にしなさい。)とさとすために詠んだものだとか。
 また、恋歌に「紅の 花にしあらば 衣手に 染め付け持ちて 行くべく思ほゆ」(彼女が紅花であったならば、自分の着物の袖に染め付けて持っていけるものを。)があり、恋人を思う心情がにじみ出ています。
 しかし実際は、なかなか彼女は自分の方を向いてくれなかったものと思われます。
 (写真はくれないの花です。花は黄色ですが赤色の染め付けに使用されます。)