タバコ・ロード

というわけで。松尾のブログの始まりです。

僕が初めてタバコを吸ったのは、35才になったばかりのある冬の夜でした。

父がいつものように夕食後に、台所で換気扇を回してタバコを吸っていたので、

何となくです。本当に何となく、 「父さん、僕も吸っていい?」 と尋ねました。

「お前は辞めたほうがいいんじゃないかな」

「大丈夫だよ。タバコくらい」

そして、マイルドセブン・スーパーライトを一本、ボックスから取り出し、兄貴のお嫁さんから、父と母の結婚記念日にプレゼントされた、メタルシルバーのやたらと細身のジバンシィのライターで火をつけて、軽くスパッとしてみました。

数年前の映画雑誌の表紙でブラッド・ピットがタバコをくわえてニカッとやったように、親父に向けて笑ってみようとした瞬間—

「ゴホ!ゴホ!」 「やっぱ、マズイ!」

「だろう。だからお前には無理だよ」

父の微笑みが、優しさにも見えたし、見下しているようにも見えました。

「やっぱ、俺にはタバコは向いていないわ」

「そういうことだな」 父は、3本目のタバコに入った。夕食後はこれがとりあえず最後だ。

「父さんは旨そうに吸っているのにな。実際に旨いんだろ」

「こんなものは吸う必要はないよ。お前はせっかく吸わないできたのだから、これからも吸わなかったらいいんだよ」

トライ。チャレンジ。アタック。他、全てのポジティブさとはかけ離れた、最初で最後になるであろう、僕のタバコ・ロード。

夕食後の歯磨きを終えた時点で、終わってしまった。

ハンフリー・ボガード、ジミー・ディーン、石原裕次郎らがこよなく愛したタバコ。

僕は僕なりのカッコウよさを追ってみることにしよう。

それは僕なり—自分なりだから、例え、女性たちに相手にもされなくてもいいんです。

強がりに聞こえます?