ユートピアを求めて

ボーダーの子の特徴の一つは、ユートピア(完全)を求めて、人や場所をさ迷い歩くこと。

1箇所に落ち着くことが難しい子は3ヶ月も持たない子もいる。
人ももちろん、自分を理解してくれる、何でも許してくれる人を求めてさまよう。

なんでもしてくれれば安定し、幸せになるかといえば、そうはならない。
いよいよ不安になり、問題行動が増えたりする。

正直、本当に哀れだと思う。

そういう人に「限界設定が必要」と言われるのは、そうすることが本人の安定につながるからである。
ただし、それは、やみくもに無理強いでするのではない。誤解のないように。

対応する側が自分の限界をはっきり明示することだったり、
本人にとって明白に不利益が説明できるようにすることだったりである。
正直時間が掛かる。

大切なのは周囲の対応が一枚板であること。
人によって言うことが違うと効果がないのだ。
言を左右にするなど決してしてはならない。難しいが。

事情や状態を知らない人が、本人が「自分の気持ち」だけを主張する姿に幼さを感じたりしたり、本人が引き起こしている状況のあまりの酷さに「かわいそう」「周囲は何をしているのだ!」などと思い「あなたは悪くない」「何とかしてあげる」などと言ってしまうこともある。

残念だが、それを続けることはまずできない。
そんな生易しいものではないのだ。

大切なことは何があっても一歩も引かない気力がいる。
こっちが負けることは、実は本人に不安を与えてしまうことであったりするのだ。

周囲の無理解がサポート側をいかに不利にするか。
これも人格障害に関わる場合、特有なことかもしれない。

それにも負けず、周囲の理解を得つつ、一歩も引かない姿勢しか、
「人は信じられる存在である」ことを教える手段はないのだと思う。

闘いは続く。