奈良女子大の講堂満員のなか、小出裕章教授は語られました。
いま日本は、広島に投下された原爆の80万発分の「死の灰」をかかえてしまいました。この灰を無力化する方法はなく、隔離して何万年もお守していかなければなりません。被ばくに安全はない。とくに年齢の低い子どもへの影響は大きいので、できるだけ被ばくさせないよう努力しなければなりません。しかし、50歳を過ぎた大人なら放射能に汚染された野菜を食べても平気ですから、安心して食べてください。
たとえ54基の原発が止まっても、電力は大丈夫です。火力・水力で十分まかなえます。CO2を減らすためとか低コストだとか、原発がエコだからといって推進してきたその宣伝はみんなデタラメです。と教授は丁寧なデータ—から説明されました。聞いている素人のボクは目からウロコ状態。植物にはなくてはならないCO2を敵視するのはとんでもないことだと。
科学をわかりやすく語る教授のことばの端々に、子どもたちへの優しいまなざしを感じさせられました。「なにより大切なのは、やさしさです」と。 If I was not hard, I would not be alive. If I could not ever be gentle, I would not deserve to be alive. というアメリカの作家の言葉を引用して、「強くなければ生きられない、優しくなれないなら生きる価値がない」と話されました。その優しさとは、生きる上で自分より困難を抱えている生き物に対してどのような眼差しを向けられるかで決まるものと思うと話されました。
そして、残念ではありますがと前置きされ、われわれ欲深い人種は、もうすこし地球に遠慮しながら生きるべきですねと話されました。産業革命以降、人間は、大気汚染・海洋汚染・森林破壊・酸性雨・砂漠化・産業廃棄物・放射能汚染、そして貧困と戦争と人間は恐ろしい勢いで地球を破壊してきました。人類という種が本当にこのまま生きのびていいのか、私にはわかりませんと悲しい表情で語られたとき、ボクにもその科学者の嘆きがひしひしと伝わってきたように思いました。いやしかし、もうすこし生かしてください、そしてすこし努力して次の世代につないでいきましょうと、声を出したくなりました。
サンデー毎日5月号に広瀬隆氏は、ただちにすべての原発を止めないと、次なる『フクシマ』は目の前に迫っていますと述べられています。浜岡は言うに及ばず、地震大国日本は、原発を持ってはならない国なのですとも言われています。
すぐ近くの福井県には、14基の原発があり、そのうち8基は老朽化しているようです。なかでも最悪の問題児といわれる使用済み核燃料を再処理する高速増殖炉「もんじゅ」には、地上最強の猛毒であるプルトニュームが大量に内臓されているようで、もし爆発事故が起これば、関西は全滅ですと広瀬氏は警告されています。
もはやとりかえしのつかない所まで来てしまったように思いますが、この青い地球を見捨てることはできません。次の世代にしっかりバトンタッチしていくために、ボクらは何をすべきか、いまこそ立ち止まって考えるときだと強く考えさせられる講演会でした。
※ 写真は、文化遺産でもある奈良女子大の正面から撮影したものです。