私たちが植林しているところは大興安嶺と大行山脈を遼河が西から東へと切ってできた洪積層の扇状地、ホルチン砂漠の北部の赤峰市、アルホルチン旗である。ホルチンというのはモンゴルの一部族の名前であり、その遠祖はチンギス・ハーンの弟のカサルである。
この地域は伝統的には牧畜のみであったが、旧河川流域部に農業が進出し、また牧戸も流域底地に定住して周辺に農業を導入した結果、農業と牧畜とが並存するようになった。低地での農業は地下水汲み上げに依存しており、その水位は毎年1〜2mも低下している。農地として使える低地は全て開墾した。飼料用農業を始めてから、冬季に乾草に代えて玉蜀黍の実と藁を使えるようになり、旱魃の年でも家畜の餌を確保でき、家畜の肉付きもよくなり、厳冬を凌ぎやすくなり、死亡率が下がった、また、販売期は秋の太った時期だけであったが、今では春先にも売れるようになった。だが、飼料用農業が重要となると、不適切な牧草地までも開墾されるようになった。それが新しい砂漠化問題を引き起こしている。
植林は、飼料用農地の周辺、住居・畜舎の周辺で進んでいる。防風・防土、防寒、枝を燃料に、葉を家畜の餌に、間伐材を鉄柵の柱にする、夏に涼しいなど、林が牧畜経営に多様な効果を持つことが認識されるようになった。木の市場価格も上がっている。また、飼料用農業と同じ井戸、鉄柵を兼用できるので、植林の費用、管理、監視の費用は殆どかからない。住居から離れた砂漠、牧草地に木を植える場合には、新しい鉄柵や井戸の建設が必要になり、費用が高くなるし、生育率も低地よりも低くなる。
牛の頭数が増えている。牛肉の高騰や、牛は飼料があれば飼育しやすい、放牧に手間がかからないためである。当地域の経営は牧畜、飼料用農地、林業を組み合わせた複合経営となっている。牧畜には牛、山羊、羊がある。これらを適切な組み合わせ、市場で評価されていない藁を家畜の餌にする、牛フンを化学肥料に代える、木の枝を燃料に、葉を家畜の餌として使っている。