《♯10 スクール・ミーティング》

デモクラティックスクールの中でミーティングは、それがなければデモクラティックスクールとは言えないという制度です。

学校の中で単に自由に何でもしていいのであれば、多くのフリースクールはそのような環境をもっています。

デモクラティックスクールがデモクラティックスクールであるのは、子どもたち自身が学校を運営し、校内のルールを自分たちに合わせて作りかえることができる点にあるのです。

今回はこのミーティングについてサドベリー・スクールの子どもやスタッフが考えていることを紹介します。

《#10 The School Meeting》 on YouTube

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Q:デモクラティックスクールでの意思決定はどのように行われているのですか?」

Michael(16才 Jerusalem Democratic School)

「意思決定のためにはいつくつかの制度がある。

 総会(General Assembly)は予算に関して行うもので、生徒・スタッフ・親が参加する。

 それに対して毎週行われるスクール・ミーティングは日々の事柄を扱うもので、スタッフと生徒が参加する。そのスタッフと生徒の集まりは“スクール・コミュニティ”と呼ばれている。スクール・ミーティングは学校内のことを扱うのであって、そこに親は関わらない。」

Kelly(14才 Jerusalem Democratic School)

「親がスクール・ミーティングを乗っ取って、学校内のことについて決定を下すような状況は望んでいないわ。学校内のことは、そこに毎日いる人が意思決定すべきだから。親は学校にはいないのだから」

Q:なぜスクール・ミーティングをもつことが重要なのですか?」

Kelly

「スクール・ミーティングがなければ学校が混乱してしまう。重要な意思決定に対して責任をもつためには、ミーティングという権威が必要だから」

Q:スクール・ミーティングではどういう決定をするのですか?」

Kelly

「予算や、場所の使い方や、すべてのこと…」

Regina(20才 The Booroobin Sudbury Democratic Centre of Learning)

「安全に関するルールを決める。他の人の財産や学校の財産を尊重することなど」

Q: なぜサドベリー・スクールはルールをもっているのですか?

Michael

「サドベリー・スクールがフリースクールと違うのは、ルールをもっているということ。

 フリースクールは生徒が“自由でいることを許可”している。

 それに対してデモクラティックスクールがデモクラティックなのは、“僕たちの自由を守る”制度をもっているから。それによって、他の人から自分を守ることができる。

 ルールは人の分別のある判断力を制限したりはしない。「数学を勉強しなきゃいけない!」みたいな制限を加えたりはしない。他の人の自由を侵さないためにどう行動しなければならないかをルールは教えてくれる」

Regina

「暴力に反対するルールや、すべてのルールをわたしは小さい子どもたちから学んでいます。5歳の子どもが「それはしていい!」それはしちゃいけない!」って言ってくれる」

Kelly

「学校内の物事を安全に・よくするためにルールはある。暴力や危険なことに反対するルールとか。ハッピーな環境をつくるためにルールがあるの」

Seth(Sudbury Valley School 元在校生)

「ミーティングではたしかに誰もが同じ一票をもっているのだけど、同時に運営するということにみんなが気を配らなければならない。それによって他人に悪影響を与えるような決定を下したりすることはなくなる。他人から自由を不必要に奪う状況をつくらなくなる」

Regina

「ルールというものは、わたしたちがもっているルールすべて、みんなの行動を制限したり拘束するものじゃない。何も問題はないわ。ルールがコモンセンスだから。それにルールが好きじゃないなら、変えることができる」

Q: ルールを変えることはできる?

Regina

「簡単。申請して、ミーティングで議論して、自分の意見を言えばいい」

Q: どのくらいの人がミーティングに参加しているの?

Kelly

「スタッフも含めて20人くらい。全員の生徒のうち半分くらいはスクール・ミーティングに来る」

Seth

「わたしは10才のときからスクール・ミーティングに参加し出した。小さい子どもの多くは、関心のある事がなければスクール・ミーティングに参加しない」

Q: あなたは議長になったことがある?

Cassie(10才 Praine Sage Sudbury School)

「あるわ」

Q: 議長は何をするの?

Cassie

「議長は大きくハッキリと声を出さなきゃいけない」

Kelly

「もちろんミーティングを運営しなきゃらない。

司法委員会に対してルールのアドバイスをしたり」

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今回はミーティングについてのサドベリー関係者の発言でした。

デモクラティックスクールというと、単に自由に何をしてもいい学校と思われる人もいるかもしれません。たしかにそれはサドベリーの大きな要素なのですが、“自由に何でもできる”ことを標榜するだけなら、他の学校もしています。

デモクラティックスクールをデモクラティックスクールにしているのは、むしろミーティングにあると言ってもいいぐらいではないかと、わたしは日々学校で過していてよく思わされます。

ミーティングによって子どもたち(とスタッフ)は、自分で自分のいる環境を創造することができるのです。

日々の活動で子どもたちは自分の好きなことを追求します。それは自己の内面を深めていく作業と言えます。

それに対してミーティングは、それぞれ一人である自分自身を越えてまわりの人とひとつの環境を創造していく過程です。それも、必ずしも同じ興味・関心をもっているわけではないし、同じ年齢じゃない人と一緒にコミュニティを作っていくのです。

最後に、サドベリー・バレー・スクールのダニエル・グリーンバーグとミムジー・サドフスキーさんのミーティングに対する言葉を引用します。

 「公正と正義に対するそのコミュニティの感覚、罰・名誉回復・受け入れ・排除についてのコミュニティの態度、個人の関心と団体の関心の間の境界線などの事柄に対する基本的な姿勢をスクール・ミーティングは定める。またスクール・ミーティングは、財政上の責任・公的な説明責任・環境の美観などについての考えといったコミュニティの規範を決定する。
 司法手続きとスクール・ミーティングはスクールの初年度の間は莫大な時間、ときには一日に数時間を使うが、これ以上によい時間の使い方はない。なぜなら、これらの制度によってコミュニティを形づくる構造に命が吹き込まれるのだから。日毎や週毎にディスカッションやディベートをすること、スクールのあらゆる側面を月毎や年毎に再検討することが、コミュニティを発展させる上での思想的・精神的な拠り所なのである」(“Starting a Sudbury School” by Daniel Greenberg and Mimsy Sadofsky p.134 )