有名な哲学者のヴィトゲンシュタインにこんな短いエピソードがあります。
彼がある人の家に訪問していました。
その家の夫人がヴィトゲンシュタインにお茶を注ごうとしていろいろと好みを聞こうとしました。
するとその家のおやじは夫人に「なんか適当に出しとけばいいんだ」と荒っぽく言い放ったそうです。
それを聴いたヴィトゲンシュタインはいたく感動したそうです。
ヘンな話かもしれませんが、わたしにはヴィトゲンシュタインの気持ちがよく分かるような気がします。
人のうちに訪問して、あれがいいかこれがいいかその家の人にあれこれ言われても、出される方は困ってしまうものです。
気が置けない友達と一緒にお茶を楽しむわけではありません。特別親しいわけでもない人とお茶を飲むのに、あれこれ飲み物を考えようとは普通思いません。また相手の人にいろいろ気を使われても疲れてしまいます。
それに、そこにはまだ心の通ったコミュニケーションはありません。やたら気を使われても、相手が自分という人間に対して本当に関心をもっていなければ、しらけるし、うっとおしいものです。
ある日宙(そら)で、外に遊びに行っていた子どもに、
「もう帰ってきたの?」
と聞くと
「Shut up!」
と言われたことがあります。
べつの子どもに
「最近どう?」
と話しかけると
「知るか」
と言われたこともあります。
わたしはそう言われたとき、そう言われるのももっともだと思いました。
私は子どもに何か話しかけたほうがいいと思って話しかけました。
しかしそこには、相手に対する本当の興味や、本当の関心はなく、おざなりの言葉をかけようとした態度があったのかもしれません。
相手が大人であれば、それに対して礼儀としての返答をしたでしょう。そして退屈な会話が始まったことでしょう。
しかし子どもたちは、そういう大人の無理な気遣いや、退屈なコミュニケーションを察知し、拒否したのだと思います。
デモクラティックスクールで子どもたちはよくおしゃべりをします。
しかし大人同士が、知り合いというだけで交わす、表面的にはさわやかで礼儀正しく、しかしとても退屈な会話はしません。
そういった偽善とは彼らは無縁なのです。
彼らはどこまでも自分に正直です。
だから素晴らしい、と私は思います。
>>子ども「が」まなぶ 「超」学校。
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