寒(平成22年3月29日)

ありもと@孟子です。。 みなさんこんばんは。。。。

ここ数日、和歌山北部は冷蔵庫の中です。
冷たい季節風に晒され、記録的に早く開花したサクラ類も、
開花の速度が一気に鈍くなり、4月まで花が残る気配です。

8時、孟子不動谷到着です。

今日はわんぱく公園で組織している「わんぱくクラブ」の卒業
式を孟子里山公園で行うことになっています。

「姦しい」来客を迎える前の数時間、孟子の自然と語らいた
いと思います。

ピョピョピョ・・・
犬飼池の坂道を登るありもとに警戒して、池畔のアカマツに
止まっていたミサゴが前のめりに倒れるように飛び立ちます。
数年前、池への坂道のクヌギを、榎さんがシイタケのほだ木
用に伐採して見通しが良くなって以来、堤に立つ前にミサゴ
に気づかれるようになり、なかなか撮影しづらくなりました。

アオサギもカイツブリも元気にしています。

水路道に沿って、紫色の花弁を広げたスミレたちが花盛りで
す。
シハイスミレにタチツボスミレ、ニオイタチツボスミレ・・・
いずれ劣らぬ可憐なスミレが、妍を競っています。

シュンランの花が咲きだしました。
2004年 3月19日
2005年 3月26日
2006年 3月25日
2007年 3月28日
2008年 3月29日
2009年 3月28日
2010年 3月29日
ここ7年間のシュンランの開花日を並べてみると、本当に毎年
ほぼ同じ時期に開花しているのがわかります。
特にここ4年間は、3月28日か3月29日のいずれかに開花し
ています。
こういう「規律正しい」植物を見ると、やはり温暖化なんて、人
間の杞憂に過ぎないのでは?と思ってしまいます。
シックな装いのシュンランの花を見ると、「今年は寒い」「今年
は温い」・・・そういって1年1年一喜一憂する人間どもに「そう
騒ぐなよ」と、冷静に語りかけてくれているように感じます。

昨日和歌山市の栄谷で、今年いちばんのサシバを観察したの
で、今日孟子で・・・と、朝から上空を見上げますが、晴れ間が
多いものの時折鼠色の時雨雲がめぐって、霙が落ちる孟子の
空には、春の使者はそぐわないようです。

そんな寒風の中でも、ウグイスの囀りが春を語っています。

丸嶋水田には、夥しい数のツグミが下りています。
そろそろ北帰行の季節を迎え、彼らもそわそわしだしています。
畔の上を歩いては止まり、止まっては歩き・・・
しながら時折土中に嘴を差し込んで、小さなミミズを咥えては、
せわしなく呑み込んでいます。

ツーペ ツーペ ツーペ・・・
2拍子の整然としたメロディーを刻んで、シジュウカラが歌って
います。

ヒョー ヒョー ヒョー・・・
雑木林の中から、アオゲラの春の叫び声が響いています。

ヤマザクラは今が盛りです。
3月15日の開花から、順調な「春日和」が続いていれば、もう
すでに散り始めているであろう春の花も、ここ数日の寒さの影
響で、「見ごろ」がちょっと遅まっています。

きみひろ池では、セグロセキレイとキセキレイがピョコピョコ歩
きながら、小昆虫を探しています。

散り始めたシデコブシの花には、ヒヨドリが吸蜜に来ています。

9時を過ぎるころから、わんぱく公園のスタッフたちも集まりは
じめます。
山本君、坂本さん、嶋田さん、芝さん・・・
北原さんも少し前からログハウスで薪ストーブに火を入れてい
ます。

ありもとはそろそろ入口に迎えにいきます。
丸嶋水田で集うツグミの群れや、とんぼ池周辺で巣場所を探
すシジュウカラの♂などを撮影しながら、水路道を歩いている
と、参道を歩く中学生たちが目に飛び込んできます。

平成22年度から2年間、日本ユネスコ未来遺産プロジェクト
で協働する、和歌山県立向陽中学校の面々です。
今年の彼ら独自の孟子での昆虫調査を始めるようで、そこに
今年は未来遺産の調査も入るということで、春休み早々訪れ
てくれたのでした。

今日は賑やかな一日になりそうです。

榎さんの前の駐車場に着くころから、わんぱくクラブの面々が
顔をそろえはじめます。
榎本拓真君、大堀祐輔君、魚海圭秀君、松村滉汰君・・・・
6、7名の参加かな?と予想していたのに反し、総勢17名が
集合してくれました。

挨拶もそこそこに自然観察&探検を開始します。
まずはネザサの深い「藪こぎ」をして、ヒメカンアオイの花を見
にいきます。

「ここはわんぱく公園のような都市公園ではありません。です
から皆さんを守る柵なんかもありません。足元に気をつけて、
田んぼや溝に落ちないように歩きなさい」
最初にこれだけを注意します。

みんなワイワイガヤガヤと騒ぎながらも、日ごろ経験したこと
のない深いネザサ藪に、真剣に足元に気をつけて進んでい
ます。
わんぱく公園のように綺麗に草刈りがなされ、丈夫な木道が
敷かれた立派な公園では「学べない」ことが孟子里山公園で
は学べます。

深い藪こぎを終えたあとの古い水路沿いに、ヒメカンアオイの
群落が現れます。
ありもとが株の真ん中の落ち葉を除けて花を引っ張り出すと
「わぁ!ラフレシアみたいや!」
と歓声を上げる子がいます。
今は綺麗な映像の科学番組が巷にあふれているので、子ど
もたちがカンアオイの花を見ての感想も「ハイカラ」です。

自分が子どもの頃「カキのヘタみたい」と感想を漏らした日の
ことを、気恥ずかしく思い出します。

カンアオイを食餌植物にするギフチョウという早春性のアゲハ
がいることを知っている小学生も、最近はそう珍しくないご時世
なので、今日もそういう感想を漏らす子もいました。

カンアオイがアリに花粉を運んでもらうという習性があり、その
ことでなかなか分布が広がらず、局地的な植物であることを話
すと、携えていたデジカメで熱心に撮影する子や、ありもとがち
ぎって与えた葉を、大事そうに袋に入れる子もいました。

こういう貴重な「命」は、彼らにまず「見せる」ことから始めねば
ならないと思います。
映像や写真ばかりの知識で頭でっかちになりがちな近頃の子ど
もたちにとって、実際自分の手で「触る」ということの重要性は、
何者にも代えられぬ重要なことだと思っています。
図鑑に掲載された不鮮明な1枚に写真をもとに想像を膨らませ、
実際現地で出会ったときに感動を覚えた自分の少年時代とは、
全くちがう時代に生きる彼らに、孟子不動谷の里山自然は、そ
の最も重要な「出会い」を経験させることのできる「価値」がある
のです。

今回未来遺産指定された孟子里山公園の「価値」が、ここに輝く
のだと思います。

水田まわりではウマノアシガタが咲いています。
バターカップという別名を持つきんぽうげ科の草花です。
2004年 4月 1日
2005年 4月 5日
2006年 4月 5日
2007年 3月20日
2008年 3月29日
2009年 3月21日
2010年 3月29日
この花はシュンランとは違い、最近開花時期が若干早まってい
ます。

孟子不動谷で調査を開始したころから見られ、今はすっかり耕
地雑草として定着した感のあるヤワゲフウロも咲きだしました。
2004年 3月19日
2005年 4月 5日
2006年 4月 5日
2007年 3月18日
2008年 3月22日
2009年 3月11日
2010年 3月29日
市販されている肥料に種が混入して広まったと言われるこの外
来植物は、足早に水田まわりの「顔」になりつつあります。

子どもたちは水路道を行きます。
水路に泳ぐヤスマツアメンボや大きなヤスデ
気づくと服に止まっているクロタニガワカゲロウやタチツボスミレ
でホヴァリングするブロードツリアブ等を観察しながら進みます。

丸嶋水田にさしかかったところで、みんなでツクシ摘みです。
「いっぱい摘んで、お母さんへのお土産にしよな・・・」

今の若いお母さんにはツクシなんて「迷惑」なだけかも・・・・・
そう思いながらも、五感で自然と対峙する体験を彼らにさせた
くてツクシ摘みをさせてみました。

子どもたちは嬉々として摘んでいます。
ここから合流してくれた丸嶋さん&ホワイティ、芝さんたちも、
一緒に摘んでいます。

山菜という人間と里山の「切り口」もまた、孟子不動谷未来遺
産の重要な「価値」なのかもしれません。

山案山子につくと、実恵子さん、偉士大さんたちが子どもたち
を迎えてくれます。

ありもとは数人の生き物好きの子どもたちを従えて、片手に網
を携えつねとも池に向かいます。
彼らにカスミサンショウウオの幼生を見せてあげるためです。

中山間地の水田が放置されることでその数を減らし、和歌山県
や環境省からどんどん重い冠をかぶせられつつあるこの小さな
サンショウウオも、かつてはごく普通の「隣人」でした。

そんなに特別なものじゃない、田んぼがあれば普通にいるもの
だということとともに、バランサーを蓄えた、小さなオタマジャクシ
を彼らに「引き合わせる」ことに成功したのでした。

楽しい昼食タイムのあと、丸嶋さんや向陽中学の「お兄さん」た
ちと一緒に鶴者峠に向かいます。
途中天堤池で丸嶋さんと一緒にわらび摘みです。
さきほどのツクシ同様、「山菜」という切り口を彼らに味わって
もらいます。

鶴者峠の道では、ウラシマソウが開花しています。
2004年 4月10日
2005年 4月 9日
2006年 3月28日
2007年 4月17日
2008年 4月13日
2009年 3月21日
2010年 3月29日
このサトイモ科の植物も、最近開花時期が早まりつつあるようで
す。

コナラの落ち葉を踏みしめながら、ワラビを摘み、ウラシマソウか
ら出た「つりざお」のように長い付属器に驚き・・・
子どもたちは卒業式の日にたくさんの「お土産」を孟子の里山か
ら得たことでしょう。

15時
わんぱくクラブの子どもたちを見送り、向陽中学の子どもたちに
ヒメカンアオイの花や、ヤマネコノメソウの花の説明をし終え、
孟子不動谷に静寂が訪れます。

ようやく谷が静かになったわい・・・
そう言って上空に若いハイタカが姿を表します。

さきほどまで降っていた霙が漸く収まり、陽光が差し始める静寂
が戻った不動谷に、別れを告げました。

この寒さは、しばらく続きそうです。
@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@
<鳥類>
カイツブリ、アオサギ、ミサゴ、ハイタカ、キジバト、コゲラ、アオ
ゲラ、キセキレイ、セグロセキレイ、ビンズイ、ヒヨドリ、モズ
ルリビタキ、ジョウビタキ、シロハラ、ツグミ、ウグイス、エナガ
ヤマガラ、シジュウカラ、メジロ、ホオジロ、アオジ、クロジ、カワ
ラヒワ、イカル、シメ、スズメ、ハシボソガラス、ハシブトガラス
@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@
<両生爬虫類>
ニホンアマガエル成体
ニホンアカガエル幼生
カスミサンショウウオ幼生
ニホンカナヘビ成体
@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@
<昆虫類>
コカゲロウ、クロタニガワカゲロウ、オナシカワゲラ、マツモムシ
アメンボ、ヒメアメンボ、ヤスマツアメンボ、アシブトハナアブ
ビロードツリアブ、キイロホソガガンボ、モンキチョウ、キチョウ
フクラスズメ
@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@
<花>
スズメノテッポウ、スズメノカタビラ、ヒメカンスゲ、セキショウ
ウラシマソウ、サルトリイバラ、シュンラン、ヒメカンアオイ
ヤマモモ、コナラ蕾、クヌギ、ハコベ、ウシハコベ、ノミノフスマ
ノミノツヅリ、オランダミミナグサ、ウマノアシガタ、キツネノボタ
ン、ヤマネコノメソウ、アケビ、シデコブシ、テンダイウヤク
タネツケバナ、ミチタネツケバナ、ナズナ、ミツバツチグリ
キジムシロ、カマツカ蕾、ナガバモミジイチゴ、ヤマザクラ、ソメ
イヨシノ、ハナモモ、モモ、スモモ、ユキヤナギ、ゲンゲ、ウマゴ
ヤシ、コゴメツメグサ、カラスノエンドウ、ヤワゲフウロ、ヒサカキ
ヤブツバキ、タチツボスミレ、ナガバタチツボスミレ、ニオイタチ
ツボスミレ、シハイスミレ、ヤブジラミ蕾、モチツツジ、アセビ
ヤマツツジ蕾、レンギョウ、キュウリグサ、ジゴクノカマノフタ
ホトケノザ、ヒメオドリコソウ、オオイヌノフグリ、タチイヌノフグリ
トキワハゼ、ムラサキサギゴケ、ヤエムグラ、ウグイスカグラ
コオニタビラコ、フキ、オニタビラコ、カンサイタンポポ、セイヨウ
タンポポ、ハルノノゲシ、ノアザミ
@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@