向陽中学との2日間(平成22年4月25&26日)

ありもと@孟子です。。 みなさんこんばんは。。。

4月25日11:30、わんぱく公園を後にしたありもとは、孟子不
動谷に到着しました。

4月に入り、漸く暖かな好天の孟子でした。
センダイムシクイ、オオルリ、キビタキが大合唱しています。
天堤池では、オグマサナエが羽化を開始しています。
一気に春が進み、初夏に装いを変えつつある孟子でした。

今日は1大イベントの日です。
平成21年12月1日、(社)日本ユネスコ協会連盟の第一回未
来遺産運動に登録された「孟子不動谷生物多様性活性化プロ
ジェクト」の第一回調査日なのです。

ありもとが孟子に着くと、もう早々と向陽中学の生徒諸君が到
着していました。
丸嶋さんに聞くと朝9時にはもう来ていたとのことです。

今日はフクロウ調査もあるので19:30までの長丁場なのに、
朝からやってくる彼らの熱心さに頭がさがります。
また中学生に交じって、向陽中学OBで今は向陽高校に進学
している奥村君や川久保君の顔も見えます。

未来遺産の調査は13時からですが、彼らは今年も継続してい
る孟子の生物調査を先乗りで行っているのでした。
ありもとの顔を見つけると早速話しかけてきます。
「先月教えてもらったサワオグルマ咲いてましたよ!」

崖をよじ登ったところにある小さな池に自生する和歌山県RDB
絶滅危惧Ⅱ類の植物の花をすでに確認してくれていました。

彼らの野帳に目を通します。
ヒメウラナミジャノメ、トラフシジミ、コミスジ・・・
ありもとがまだ今年未記録のチョウを記録してくれています。
頼もしい「後輩」たちです。

13時になり、顧問の前川先生と1年生諸君が到着して、いよ
いよ未来遺産プロジェクトの調査開始です。
向陽中学理科クラブ2,3年生16名に新入の1年生6名をく
わえた総勢21名の「若き調査員」たちです。

まずは「田んぼの生き物調査」のさきがけとして行うとんぼ池
の生物調査です。
つねとも池をAゾーン、1号池〜織田池をBゾーン、きみひろ
池をCゾーンとして、まずはそれぞれのゾーンに7名ずつ配置
して1時間、網を使って生き物をすくい取ってもらいます。

歓声をあげながら嬉々として網をふるっています。
「でっかいヤゴをGETしたぞ!!」
「こっちはでっかいトノサマガエルや!」
口ぐちに叫び声をあげながら賑やかな調査です。

時折調査の手を休めて山案山子に架設した巣箱に営巣してい
るシジュウカラを観察にきます。

14時「終了〜!!」
前川先生の号令とともに調査は終了です。

これからいよいよありもとの出番です。
それぞれのゾーンの採集物を同定し、個体数を数えていきます。
ありもとの叫ぶ標準和名と個体数を、記録担当の子が書き留め
て行きます。

Aゾーン
スジアカハシリグモ 3
オニヤンマ 14
シオカラトンボ 2
タベサナエ 3
ヤマサナエ 4
カワニナ 13
ヤスマツアメンボ 1
ヒメタニシ 6
サワガニ 7
ミズムシ 5
ニッポンヨコエビ 22
カスミサンショウウオ 1
セトトビケラsp. 6

Bゾーン
トノサマガエル 4
オナシカワゲラsp. 1
キクヅキコモリグモ 4
ヌマガエル 1
ミズスマシ 1
オオミズスマシ 1
ヒメアメンボ 2
ヒメガムシ 4
ヒメタニシ 5
ギンヤンマ 1
カワニナ 18
カスミサンショウウオ 7
ニホンアカガエル 200
モノアラガイsp. 7
アメリカザリガニ 6
コシアキトンボ 1
サワガニ 2
マメゲンゴロウ 7
マツモムシ 1
モノサシトンボ 1
ハリガネムシ 1
ドンコ 1

Cゾーン
トノサマガエル 4
マルタンヤンマ 1
ショウジョウトンボ 15
ヌマガエル 1
ヒメタニシ 8
ニホンアカガエル 557
シオカラトンボ 4
カワニナ 2
ドジョウ 2
メダカ 13
セトトビケラsp. 1
タベサナエ 2
ヒメミズカマキリ 3
モノアラガイsp. 5
ヒメアメンボ 2
スジエビ 1
ドンコ 1
サカマキガイ 2
マツモムシ 3
ヒメガムシ 1
フタバカゲロウの一種 1
コカゲロウの一種 1

以上の結果になりました。
同定と個体数計測が思いのほか疲れました。

次回の6月の水田調査では、トレイを多量に用意してありもとが同
定&仕分けして、個体数は生徒諸君で「人海戦術」で行うことが決
まりました。

余った時間で貴重鳥類の基礎調査をします。
参道に沿って歩き、オオルリとキビタキの囀りの地点を地図に落と
して行きます。
今年2年生の川久保君弟は、野鳥が大好きで、ありもとが少し教え
るだけでキビタキとオオルリの囀りを覚えてしまいました。
久々に出会う鳥好きの中学生にありもとも嬉しくなります。

夜の帳の下りる19:30まで調査して、結局フクロウの声は確認でき
ませんでしたが、キビタキ、オオルリの調査は少し進みました。
フクロウは次回に「リベンジ」ということで、第一回未来遺産プロジェ
クト調査は、つつがなく終了したのでした。

明けて26日、7:30からありもとは天堤池奥の林を歩きます。
夏鳥の渡来状況を調べるためです。

満開のエビネを眺めながら、コナラ優占の林を歩きます。
キビタキとオオルリがそこここで歌っています。

ピュールリ ピリリ ホイッピリーリーリー ジュジュッ

ピューリー ココインジ ココインジ・・・

その間を縫ってクロツグミの朗々とした歌声も響きます。

ヒンカラララ・・・ 渡り途中のコマドリも鳴いています。

焼酎一杯グィーッ!のセンダイムシクイが続きます。

ポポ ポポ と繰り返すのはセンダイムシクイに托卵するツツドリの
声です。

上空をヒリリ ヒリリとサンショウクイが通過します。
夏鳥たちは一通り来ています。

ピュールリ ココインジ ココインジ・・・
目の前でキビタキが歌い始めます。
水仙色の喉を膨らませ、綺麗な♂が歌っています。
毎年ごく普通に「対面」をする夏の小鳥ですが、その目の覚めるよ
うな美しい姿に、魅了されてしまいます。

♂が朗々と歌う雑木林には、地味な色合いの♀も見られます。
ここは昨年ヒナが巣立った場所で、今年も繁殖確実なようです。

未来遺産調査対象種の今年の「健在」ぶりに、ひと安心です。

ひととおりの調査を終えて10時、山案山子に戻ります。

丸嶋さんと住野さんも到着しています。
今日は昨日に引き続き、向陽中学2年生の恒例の遠足の日です。
80名の生徒諸君を迎えます。

10:30
顧問の樋上先生にひき連れられた80名が到着です。
昨日未来遺産調査に来ていた川久保弟君の顔も見えます。

25、6名の3グループに分かれ、丸嶋さん、住野さん、ありもとの
講義を順々に受講していくという、例年通りの方法での里山学校
が開校しました。

ありもとは3グループにそれぞれちがう講義を行いました。

まずCグループはとんぼ池でカエルの観察と外来植物の観察。
水田をめぐる「稲作水系」は日本で1000年に及び営々と、米を
作るために人々に繰り返されてきました。
その結果、稲作水系にはさまざまなそこ独特の生物が生息する
ようになりました。
ニホンアカガエル、トノサマガエル、ヌマガエル等のカエル類や、
ナズナ、タネツケバナ等の史前外来種がその典型です。
そこに根にある根粒細菌が窒素を固定するということで緑肥用
に持ち込まれたゲンゲ、カラスノエンドウ等の外来種もあります。
また近年ミチタネツケバナやセイヨウタンポポ、ウチワゼニグサ
等の外来種も入り、稲作水系周辺従来の多様性が失われつつ
あります。

続いてBグループには山案山子テラスに座って営巣中のシジュ
ウカラの持ってくる餌を観察してもらいます。
ツピッ シャカシャカ・・・
♂親と♀親が連れだってかえってきます。
その嘴にはイモムシやケムシ、クモなどがくわえられています。
女の子たちが「キショい!」と叫びます。
今の孟子の雑木林を歩くと、衣服に何頭もイモムシやケムシが
落ちてきます。
この夥しい数のイモムシやケムシを餌に、シジュウカラやキビ
タキ、サンショウクイ等の小鳥たちがヒナを育てるのです。

樹の葉を食べるイモムシやケムシが大発生しても、そのイモム
シやケムシを餌にする小鳥や、イモムシやケムシに寄生するハ
チが「活躍」してイモムシケムシの数がコントロールされ、その結
果農薬を使わないでも、山の樹はきちんと花を咲かせ実を実ら
せます。
80年の「長寿」の人間の体に蓄積される環境汚染物質の一種
である農薬を使わない農業のヒントが、ここにあるのです。

また同時に、生物多様性が不可欠な理由も、ここにあるのです。

最後にAグループはまず、ムクノキを植樹したやすゆき公園内の
休耕田に連れて行きます。
ムクノキやクヌギ、コナラは里山を代表する落葉広葉樹です。
もともと温暖な和歌山県の森林は常緑広葉樹林です。
しかし昔の人々は里山から、堆肥用の落ち葉や、炭焼き用の材、
かまどの火力用の薪というように大量のバイオマス資源を持ちだ
しました。
その結果山の土壌は痩せ、一年の半分を葉を落として休む落葉
広葉樹の林に変貌しました。
これが「里山薪炭林」です。

このように林の樹種をも人間の活動が変貌させたおかげで、氷
河期に低標高地にひろがっていたであろう落葉広葉樹林が広が
る結果になり、その時代の生き物たちが薪炭林の中で栄えました。
つまり里山の生き物の多くは「氷河期の生き残り」と言えるのです。

里山は生活のために人間は身の回りの本来の自然を変貌させて
出来上がった環境です。
その環境が1000年続いたおかげで、里山固有の生物群集が形
成されました。

このように人間は、身の回りの自然を変貌させる「力」を持ってい
ます。
その大きな力を「良い方」に使うようにこころがけることが重要です。

若い彼らには、かなり難しいと思いましたが、上記のような「メッセ
ージ」を授けました。
丸嶋先生と泥田に入り、住野先生と炭焼きを学ぶことで、里山を「体」
で感じることもできたでしょう。

泥だらけになった彼らを見送り、ありもとは一人、フキを摘みます。
ありもとにとってフキの葉は山菜の「クライマックス」です。
フキの佃煮を食べて、孟子の春が初夏にかわるのです。

フキを摘み終えて山案山子に戻ると、遠足から帰って、自転車で引き
返してきた川久保弟君が来ています。

参道沿いのケヤキで囀るオオルリを二人で探します。
長い間見上げているので、首が痛くなります。
鳥好きの彼も、一生懸命オオルリを見上げ、双眼鏡を覗いています。

その時・・・
ホホッ ホロッホッホッ ホホッ ホロッホッホッ・・・
♂のフクロウが歌いだしました。
17:10
川久保君が記録します。

最も「鳥好き」の若き調査員が、早々と昨夜の「リベンジ」を達成しました。
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<鳥類>
カイツブリ、カワウ、サシバ、ノスリ、フクロウ、キジバト、アオバト
ツツドリ、カワセミ、コゲラ、アオゲラ、ツバメ、ビンズイ、キセキレイ
サンショウクイ、ヒヨドリ、モズ、キビタキ、オオルリ、コルリ、コマドリ
シロハラ、アカハラ、ツグミ、クロツグミ、ウグイス、セイダイムシクイ
エナガ、ヤマガラ、シジュウカラ、メジロ、ホオジロ、アオジ、クロジ
カワラヒワ、イカル、シメ、スズメ、ムクドリ、キジ、ハシボソガラス
ハシブトガラス
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