ありもと@孟子です。。 みなさんこんばんは。。。
今日は未来遺産調査です。
9時に向陽中学を迎える前に6:30 孟子不動谷に行きます。
朝もやけぶる薄暗い水路道を歩きます。
今年はクロジの個体数が多いです。
ネザサ藪から飛び出して、コナラの横枝に止まります。
アオジとクロジはどちらもネザサ藪が好きな鳥です。
しかし人に驚いて逃げる逃げ方に違いがあります。
アオジはネザサ藪を低く移動して逃げることが多いのに対
して、クロジは樹上高くに移動して逃げます。
この両種の違いはかなり顕著で、薄暗くて羽衣の区別がつ
きにくい時でも、その「逃げ方」で察しがつく場合が多いです。
道の真ん中にアオジと思われる小鳥の1羽分に羽毛が円
状に散っています。
ハイタカ類の食痕です。
おそらくハイタカのものだと思います。
彼らは森の中を潜行する忍者のような狩人で、渡来しても
なかなか姿をとらえ辛いのですが、このような食痕で渡来し
ていることが確認できます。
といっても食痕だけではツミの可能性もあるので、なんとか
姿を探したいと思います。
上空のアトリ類の群れが次々と渡っていきます。
カワラヒワ、マヒワ、アトリ、イカル、シメ、ベニマシコ、ウソ・・・
孟子で記録のあるアトリ類が全種確認できました。
ルリビタキもジョウビタキも入っていますが、まだ個体数は少
ないです。
先週くらいからソウシチョウが久々に渡来して、囀っています。
このチメドリ科の帰化鳥類は、1998〜1999年の冬に多量
に確認できたのですが、その後めっきり見かけなかったので
すが、久々に声を聞きました。
ジェー ジェジェジェー
カケスが独特のダミ声で鳴きながら上空を過ぎていきます。
今年は本当にカケスが多いです。
那賀寺の庫裏の前に草地にアオジの群れが下りています。
近寄って観察してみます。
アオジは孟子ではごく普通の鳥ですが、藪の中を潜行してな
かなか姿を見ることが難しい鳥です。
前に草のケラレが入りましたが、なんとか♂♀の姿を結構
近くで撮影することができました。
グアララ グアララ・・・
ハシブトガラスが騒いでいます。
この声でハシブトガラスが騒ぐ時は普通猛禽がいる時です。
数羽のカラスが執着している森を観察していると、1羽の褐
色の小型のタカが飛び立ちました。
ハイタカの幼鳥です。
コイツがおそらく、水路道でアオジをバラしたのだと思います。
ハシブトガラスに追い出されて、上空で旋回上昇したあと、林
の中に突っ込みました。
いつの間にか9時になり、向陽中学の面々が孟子に到着しま
した。
まずはとんぼ池(A地点・B地点)と荒糸川の水を採取し、パッ
クテストを行います。
PH、リン酸値、アンモニウムイオン値、BOD・・・・
定番の値を次々に測定していきます。
生き物調査の際にはなかなか測定する時間が取れなかった
ので、一通りの生き物調査を終えたこの時期に、一気に測定
してしまいます。
ひととおりの測定を終えて11時
いよいよみんなで孟子の森林の植生の観察を行います。
孟子不動谷の特徴は、最大標高200m前後の丘陵地型であ
るにも関わらず、山地性の鳥類の生息種数が多いことです。
それは緑色片岩による肥沃な土壌の上に形成された里山とし
ては比較的樹高の高い落葉広葉樹優占の森林が形成されて
ることと、里山が放置されて中層に灌木の藪ができ見通しの悪
い森林になっているためです。
植生遷移が進み、樹高の高い、見通しの悪い林になることで、
ウラナミアカシジミ等の本来の手入れの行きとどいた里山林
を住処とするチョウが減少しているのに対して、鳥類の種組成
が一気に豊富になったということです。
森林の植生遷移とそこに生息する動物との因果関係は、本当
に複雑で難しいものです。
手入れの行きとどいたすっきりした里山林にすることで、里山
独特の昆虫類は栄えますが、逆に鳥類の種組成は貧弱にな
ります。
いっぽう植生遷移が進行して里山独特の昆虫類が減少すると
今度は鳥類の種組成が豊かになります。
どちらが「良い」「悪い」ではないのです。
未来遺産として指定された所以は「里山」だとしたら、やはり手
入れの行きとどいた里山林をある程度保全しなければなりませ
ん。
しかし一方孟子不動谷の大きな特徴である鳥類の豊かさも失
いたくないので、天堤池周辺の林は下層の発達をそのままに
保全したいものです。
これを実現するには、森への手入れの度合いを変えていくしか
ないでしょう。
これこそが昔の里人が行った「奥山に思想」に通じる管理のし
かたなのでしょう。
中学生である彼らには難しすぎる問題でしょうが、この年齢から
こういうことを考える習慣をつけることは、きっと彼らの将来にお
いて、プラスになると信じて今回、この観察を調査メニューに入
れました。
「森を保全する手法は、その森をどんな森として保全するか?
つまり、植生遷移をどの時点で止めて管理するのかによって
大きく変わるものなんよ。だから、何が正しくて何が間違ってい
るかということは、決して一意に決まるものではなくて、保全し
ようとする森のタイプによって異なるものやということを覚えて
おいてほしい。正解が1つではないことが、自然科学の一番の
特徴で、また一番の魅力なんやで」
このことが、今回彼らに送りたかった「メッセ−ジ」でした。
来る12月11日
和歌山県立自然博物館レクチュアルームにて、彼らの「檜舞台」
が待っています。
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<鳥類>
カイツブリ、カワウ、マガモ、ハイタカ、キジバト、アオバト、コゲラ
アオゲラ、キセキレイ、セグロセキレイ、ビンズイ、ヒヨドリ、モズ
ルリビタキ、ジョウビタキ、ノゴマ、シロハラ、ツグミ、ウグイス
ソウシチョウ、エナガ、ヤマガラ、シジュウカラ、メジロ、ホオジロ
アオジ、クロジ、カシラダカ、アトリ、カワラヒワ、ウソ、ベニマシコ
イカル、シメ、スズメ、カケス、ハシボソガラス、ハシブトガラス
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