今週の月曜日は、『「ゆらぐ」ことのできる力』というテーマで人間福祉学部のチャペルでの奨励をしました。
「ゆらぎ」というのは、私たちが種々の困難な場面に遭遇して感じる不安、戸惑い、葛藤、無力感、挫折感…といったいわゆるマイナス状況を持つことをさします。ふつう私たちは、こうしたネガティブな状況を、できるだけ回避したいと考えます。もちろん、人生は悲しいよりも楽しい方がいいに決まっています。でも、どんなにポジティブなことばかり起こるように願ったとしても、それは虫のいい話しで、やはり、生きている限り様々なレベルの苦難や困難に遭遇します。
そんな時、そのネガティブな状況に圧倒され、押しつぶされたり、ポキンと折れてしまうのではなく、また、反対に、無視、抑圧、合理化…といった形で現実からの逃げを打つ、というのでもなく、むしろそこで現に自分の内面や、自分の周囲に起こっていること、つまりその「ゆらぎ」と直面してそこから何かを学びとろうとすること、それが「ゆらぐ」ことのできる力です。
ところで、「社会福祉に正解はない。あるのは妥当な結論だけである」ということが言われます。受験勉強を経てきた学生さんたちの多くは「正解」を求める学び方には慣れておられるでしょうが、「正解」のない学びには戸惑いを感じることは多いでしょう。万全な準備学習をしたと思っていても、100%の安心などきっと無いでしょう。むしろ準備学習で学んだ事が、現実適応のジャマをすることだってあり得ます。教科書に書かれていること、授業で習ったことが、そっくりそのまま現場で再現されるなら、どれほど楽なことでしょう!
でも、実習の醍醐味のひとつは、実はこの「習ったことと現場は、やっぱりだいぶ違う…」ということを、つまり現実の奥深さを知る得るところにあります。そして、それは、目の前で起こっていることと自分の持っている枠組みや価値観が必ずしも一致せず、戸惑いや葛藤を感じるという一種の危機状況の中で、「一体これは何だろう」「どのように対処できるのだろう」「自分は何を感じ、どうしたいと思っているのだろう」といったことをフル回転で考える、スーパーバイザーや担当教員、友達や家族など回りの人に助けを求めたり相談する…etc.etc… など、いつもと違う動きの中で自分自身を問い直すことを通して可能になっていくことだと言えます。実は、このような経験は、援助実践の原点だとも言われています。その意味で、援助者としての成長に「ゆらぐ」ことは必要だと考えられているのです。
すでに実習を始めている皆さん、これから始めようとしている皆さん、この夏は、多いにゆらいでください。折れそうになったり、逃げ出したくなったら、早めにSOSを出してください。私たち教員は、しっかりサポートしていきたいと思っています。
そう、秋になって、感性が磨かれ、ひと回りふた回り成長された皆さんにお目にかかれるのが、一番の楽しみなのですよ。
実践教育支援室室長 EK