梅雨明けがまだ…とはにわかに信じがたい、ピーカン真夏日の毎日です。
何を隠そう私は、暑いのは全然平気な夏女なので、真夏に向かうこの季節、とっても元気です。
今を去ること30年前、学生時代の夏は、YMCAのキャンプリーダーとして、瀬戸内に浮かぶ小さな島のキャンプ場で活動していました。
その昔、関学の夏休みは長かったので、私は延べ30日位キャンプに入っていました。
キャンプの最終日は、遠泳をやっていました。小豆島本島の対岸からキャンプ場のある島まで、直線距離で約1キロ、潮流の関係で弧を描くようなルートで泳ぐので実質的にはもっと長い距離になります。多い年には子ども達と一緒に、一夏4回位は泳いでいました。
泳力によって、力のある子を前と後ろに、力の弱い子を真ん中にして隊列を組み、その回りをリーダーで囲みます。更に、機械船一艘とローボート4艘がレスキューとしてつき、できるだけ同じペースで、みんなで力を合わせて、お互いに励ましながら泳いでいきます。海での水泳というのは、プールのように早く泳ぐことは目的にはしません。体力を温存しながら、ゆっくりと目的地まで泳ぎきる、という安全な泳ぎ方をすることが大切です。だんだん身体が冷えてきて、途中で足がつったり、苦しくなることもあります。そんな時に、一緒に泳いでいる仲間の励ましや、リーダーの声かけは本当に嬉しいものですし、真ん中あたりで飴を口に入れてもらうのですが、それがどれだけ甘くて有り難いものか…。
中には、どうしてもみんなのペースについていけず、隊列からはずれて遅れてしまう子どもも出てくるのですが、リーダーが一人一緒に最後まで、声をかけながら泳ぎます。もちろん、ギブアップもありで、その時はボートに引き上げてもらうのですが、自分の状況を自分で判断して、諦めることができたことを、子どもの力として認めます。キャンプ場の浜が近づいてくると、遠泳に参加していない他のキャンパーやリーダーが、鳴り物を持って出迎えてくれているのが見えてきます。
2時間余り、1キロ強を泳ぎきって海底に足をつけた時の達成感、遠泳の後に配られた飴湯の甘さと暖かさは今でも鮮明に蘇ります。
夏場の海を見ると、必ず思い出す、若かりし頃の記憶です。
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明治学院大学の深谷先生が、現場実習の質を左右する大きな要素のひとつとして、実習生が、4週間の間、基礎的な自己管理をし、学びを組み立て「泳ぎきる力」を持つことが大切である、と言っておられます。
実習という海の中で、自分の力で到達点に向かって泳いで行く時、その中で、無理をせず、けれども主体的に目的に向かって泳いでいくというのが、遠泳のイメージとつながりました。学びの主体は自分自身なのですが、困った時、苦しくなった時に、必ずその回りには、実習生をサポートしてくれるスーパーバイザー、教員、そして共に泳いでいる仲間がいます。自分の状況を認識して、必要なら助けを求めることも大切な行動です。途中で飴をなめて、泳ぐことを少し休んでエネルギーをため、そしてまた泳ぎ出す…。180時間という到達点の向こうには、今まで経験したことのなかった豊かな学びと、大きな達成感があるはずです。
照りつける太陽、入道雲、うるさい位の蝉の声……いよいよ実習シーズンに突入という感があります。
この夏の実習が本当に実りあるものとなり、これからの皆さんの人生の記憶として残るものになりますように。
実践教育支援室室長 EK