スリーA増田方式認知症予防教室ゲーム指導者養成講座
第5回
と き: 2009年8月29日
ところ: 福知山市総合福祉会館 第34号、第35号室
出席者数
午前の部 受講者 19名 地域包括 2名 予防の会のメンバー 4名
午後の部 受講者 25名 市保健センター0名 地域包括 2名 予防の会のメンバー 5名
講師: 松島慈児 原口熱美
(28日の夜学の受講者は20名 予防の会のメンバー3名でした)
最終日のために原口講師が作ってくださったプログラム「教室のミニ体験」です。
1) お出迎え
2) 日付の確認
3) 自己紹介
4) 夢の旅行
5) ゲームその1
6) ゲームその2
7) ゲームその3(机の上のゲーム)
8) ゲームその4
9) 茶話会・夢の旅行の確認
…①自由に話す
…②テーマを決める(戦時中のおやつ、子どもの頃の遊び、このごろ思うこと)
10) お見送り
松島講師のお話
当時所属していた修道院に依頼があって、初めて鎌倉の特養に行ったときには、先ず、ひどい辱そうにショックを受けた。入所者と介護職の比率は、6:1、殆どの方が寝たきり状態で、どうすればよいのか分からなかった。ベッドから落ちられて、アイタタ、何するんだと言われて、初めて口がきけるのかと分かったという方もあった。入浴は1週間に一度、夜勤は、1人という劣悪な状況であった。
以前は、認知症の方は、特養に入所できなかった。宇治のM園で 初めて認知症の方のための施設ができたときは、個室で鍵を掛けていた。1980年には「ぼけ老人をかかえる家族の会」もでき、三宅貴夫先生にお願いして研修を受けたりして、少しずつ認知症について学び、理解を深めていった。
改めて認知症とは、どんな病気かを復習してみよう。と、認知症の原因、症状(中核症状と周辺症状) などについてお話があった。認知症は誰にでも起こりうる脳の病気であり、人格の崩壊ではない。ケアのあり方しだいで病状の進行を防ぎ周辺症状に陥るのを防ぐこともできる。誰もが認知症に対して正しい知識を持ち認知症になっても地域で“尊厳のある暮らし”ができるような社会を創ろうと「認知症サポーター100万人キャラバン」事業も始められた。
認知症の方へのかかわり方としては、できるだけ早期に発見して、ゆっくり穏やかに伴走支援をしながら、認知症の進行を食い止めていくような関わりが必要だと思う。
スリーAに出会って優しさのシャワーという言葉に感動した。優しさのシャワーは、スリーAのときだけではなく、ゲームのときだけに浴びせるものでもない。認知症の方に触れ合う私達は、自分自身に優しさが欲しい。心から、目線から、言葉掛けから、動作から、あふれ出るものでありたい。ゲームの道具つくりにも「優しさのシャワー」をしみこませることだ。(これは、前回の平山講師のお話にも通じるものです)。
では、具体的に、どうすることなのだろうか。例えば、施設長として、新しいデイサービスの設計をするときに、「優しさのシャワー」を活かしたいと思った。設計の不備によって職員同士の連携がうまくいかなかったり、情報の共有に時間や手間がかかったりして、いらいらしたり、効率が悪くなるのを防ぐにはどうするか。いつもお年寄りさんと正面から向き合い、直ぐに対応できるようにするためには、どのような設計をすればよいか、を考えて介護職や、看護職、事務所が、連携して動けるための設計に心を砕いた。施設の管理者としての「優しさのシャワーの設計」という松島講師の視点は新鮮であった。
松島さんの設計されたデイサービスの食堂は、大きな円形のカウンターがあり、職員はその中と外に配置されている。配膳もすばやくでき、利用者さんにいつも目を注ぎ、向き合い、言葉を掛け、直ぐに対応できる体制でいられる。食器棚なども円形の一角を占めているし、カウンターの下にも収納場所があるので、必要なものはいつでもすぐ取り出せる。職員の移動距離は極端に少なく時間がかからない。デイサービスが新しくなったときに、見学に行ってヘエーと感心したのを思い出しました。
原口講師のゲーム指導
原口さんのゲーム指導は、これまでのおさらいを中心として、全ての流れの中に「優しさのシャワー」を発揮できるように、厳しく指導していただきました。今日はお茶とお菓子も用意して、茶話会の実践も行いました。
夜学には20人もの受講生が参加して、 時間の短い分熱心に取り組んでいました。この人たちが最終講を受けられなかったら、と考えると、本当にありがたかったと感謝の気持ちで一杯でした。4回以上参加した受講生には、修了認定書も渡して、気をつけて帰ってね、と送り出しました。
さすがに28日の夜学、29日の午前と午後と同じ講義を3度も繰り返していただいた、松島講師は、何を喋ったか、途中でわからなくなって、冗談も言えなくなってしまった。もうこんな講義はこらえてね、と悲鳴を上げておられました。松島先生、本当に申し訳ありませんでした。
終わりに
前泊を含み1日に2度も同じ講義をしていただくという、前例の無い形の養成講座は、講師の方々の犠牲的ご協力のおかげで、受講生の9割の73名(運営委員も含む)の修了認定者を育成することができました。まとまって、予防教室を実行するには、多すぎる人数ですが、これだけの方が、スリーA認知症予防の講義を聞き、
実技を学んだことは、いつか、福知山市の中に認知症予防教室の理解者を増やし、福知山市の市民憲章である「共に幸せを生きるまち」「認知症になっても、地域でその人らしく生きていけるまち」づくりに活かされると信じたい思いです。
この教室をモデル事業として取り上げて頂き、各方面に亘って力強く細やかなご支援を頂いた、福知山市の地域包括支援センター、立ち上げる時点から、各団体への呼び掛けの機会を作っていただいたうえ、すべての会合・ゲーム指導者養成講座の会場まで一貫して無料で貸与していただいた福知山市社会福祉協議会、会を立ち上げるための方法や京都府の補助金の申請のための書類の作成、講座の技術的な面についてご助言いただいた、西保健所、福知山市保健センターのかたがた、呼び掛けに応じて様々な機会を与えていただき、ご支援いただいた、市の老人クラブ連合会、ボランテイア団体、など、そして、何より、養成講座に参加し、積極的に、認知症予防教室の活動を学び参画して頂いた大切な受講生の皆様、その他多くの方々のご厚情によって、シンポジウムや養成講座は、何とか無事に終わることが、できました。ご指導をお願いした、「NPO法人認知症予防ネット」の6人の講師の方の犠牲的なご協力は何にも増して、スリーA認知症予防教室を理解し、学んでいく上で、力強いご支援となりました。
とはいっても、講座が終わって修了認定証をお渡ししても、この講座が終わったわけではありません。今後、ゲームリーダーボランテイアとして実際の教室の中で、スリーAの理念を自分達のからだと手と言葉と態度で、どうやって具現化していくか、さらに、「認知症予防教室」に参加し、教室をこの街にどのように根付かせ、育てていくか、これからの活動の大きな課題です。
人は地域社会に受け容れられたときに成長する 〜 私なりに学び取ったスリーAの特性〜
最後に、私の今一番大切にしている言葉、
「全ての人は、誰でも、いつでも成長する権利と能力を持っています。人はどんなときに成長するのでしょうか。人は地域社会に受け容れられたときに成長するのです」(*)をご紹介したいと思います*。
現在、認知症に関する社会の関心は強く、“認知症にならないため”或いは“認知症を進行させないため”の講座やリハビリ教室は、各地で、数多く行われています。そのどれもが、認知症の症状緩和に何らかの関わりを持っていると思われます。
からだを鍛え、知力の衰退を防ぎ、積極的に様々な活動に参加するのは、大切な、自助努力です。
しかし、年をとっても、障害を持つようになっても、地域の人たちが、その症状をできるだけ正しく理解して適切な支援の手を差し伸べ、いつでも一緒に生きていく仲間として、あくまで一人の尊敬できる個人として丸ごと受けいれて行くことによってその方のこれまでもっておられた能力を発揮してご自分らしい生活を取り戻し、さらに成長していこうとする気持ちと力を引き出していく、——-これが、「優しさのシャワー」であり、スリーA方式の特徴であり、他のリハビリとちがうところです。
スリーAのゲームは楽しい笑いの中に歌を歌う、ルールを覚える、少しずつ早くしたり、難しくなるのに対応する、リズム感を取り戻す、簡単な計算を随所に織り交ぜる、いろいろな言葉を思い出して口にするなど頭を同時進行で幾とおりにも働かせる工夫が凝らされている優れたリハビリです。運動量も指先から初めて少しずつ全身へと広がって行き、自然に脳活性化が身に付いていくのです。さらにこのゲームは、輪になって座ったお仲間さんと自然に触れあい、協力し、繋がりを次第に深めていく働きも持っています。
その随所に「優しさのシャワー」による癒しが縒り合わされて、大切にされている、受け入れられている、尊敬されている、と感じ自信と意欲を取り戻し、お互い同士の間にも優しさが醸し出されるのです。
この目的をスムーズな流れとするためにスリーAの予防教室では、2:1の割合でお仲間さんの間に位置するスタッフの役割はとても大切になります。ボランテイアさん達は、優しくお世話好きで、人のためになりたいという気持ちがあふれている人が多いのです。ともすれば、先回りして、世話を焼いたり、自分がやってあげてしまったり、教えてあげたくなります。でも、それが、70年も80年も社会の中で生き抜いてきた高齢者の誇りを傷つけていることに気付いて初めて本当のボランテイア・スタッフに成長するのかもしれませんね。
福知山は、「共に幸せを生きる」という市民憲章を持つまちです。スリーAが定着し育っていくのにふさわしい街のはずです。これからのこの会の役割の大きさとそれを進めていく方法の前途を思うとむしろ不安が先に立ちます。どうぞ、今後もしっかりと見張っていただいて、ご指導ご鞭撻いただきますようお願い申し上げます。
* 「街に暮らす−スエーデンの知的障害者福祉の実践」
(福知山認知症予防の会 村岡洋子)