「認知症予防ゲーム(スリーA)指導者養成研修会」老人クラブ主催

「綾部市認知症予防ゲーム指導者養成研修会」は、綾部市に隣接する福知山市の住人・当NPO法人村岡理事の引き受けで実現し、3回シリーズの第1回、6月30日(水)に、私は綾部市豊里コミュニテイセンターに伺いました。

昨年の秋に綾部市役所が、これも3回シリーズでスリーAの認知症予防講座に招いてくださった、その会場地域の老人クラブ連合会が、今回の主催者なのです。
綾部市の豊里地域はとても広域で、老人クラブ連合会の役員さんのうち何人かが、昨秋の市の講座に参加されて、「スリーAは良い」と思ってくださり、今回はご自分たちの地域に自分たちの手で、「指導者養成」をしようと、積極的な企画を立てられたのです。
すばらしい展開です。
綾部市豊里地区の老人クラブに、他の地域の老人クラブも見習ってほしいと願わずにはおれません。

その3回シリーズの初日に、私は次のようなレジュメで、約1時間の講演とゲーム“その1、その2”を行いました。

講演要旨
認知症とは
「ぼけたらおしまい」…誤解だった
スリーA増田方式認知症予防とは?
・・発症した方:「重度化予防」と「在宅生活への引戻し」
・・物忘れの段階:「発病予防」と「明るい在宅生活への引戻し」
・・一般の方:「転ばぬ先の予防」
認知症予防=保健予防の意味について
認知症からの引き戻しの三原則
・・優しさのシャワー(癒し)
・・脳活性化リハビリ(予防ゲーム)
・・笑いの効用
在宅介護での応用
生活意欲の改善と医療と車の両輪
認知症患者の尊厳を守る

畳敷きの大広間に、35人の輪になってゲームの実習をしました。
ゲームの中で私は、どのように「優しさのシャワー」を降り注ぐのか、実技とともに次のように説明しました。
片方の親指を折ってから数える「1から10まで」の指の運動では間違える方が大多数です。
その時の言葉のかけ方
「これは難しいでしょ? このような数え方なんて普通は一度もしませんからね。慣れていないから誰もが間違って当たり前なんですよ」とまずは慰めます。
次いで、
「間違えると、アレ?どうだったかな、と一生懸命に考えますよね。その一生懸命さが大事なんですって。簡単なことで一生懸命に考えるのがいいのですって。
まず大きな声で数を数えるでしょ(1)。
皆と声を揃えるため全体の声を聴くでしょ(2)。
左右の指を一本ずつずらして行くという事を忘れないようにしますね(3)。
腕をあげて指の関節を屈伸させる運動でしょ(4)。
それだけで四つ違う働きを同時進行でしていますよね。」
と言って納得していただきます。

なるほどと思われると、じゃあ今度こそ、と意欲をもたれます。意欲を引出すのがリーダーの役です。簡単なことを間違えるからこそ、意欲を掻き立ててもらえるようにと、願う気持ちを発声の音階にこめ、温かな物言いをします。同じ言葉でも冷たい雰囲気でいうならば、成功は難しいように思います。
相手を大事に思っていること、認知症になりかけていても引戻そうとするリーダーの優しい心が、物言いの中から相手に伝わるように言うこと、が大事なのです。目的意識は強く、しかし思いは潜めて、というバランスです。

ゲームのルールを間違った方の前に走っていって手を掴んで教えるなどは厳禁です。間違いを直さない事が全てのゲームで大切です。なぜなら輪になって坐っていますから、いわば衆人環視のなかで、皆に恥をさらすことになります。これではご本人をますます萎縮させてしまい、逆効果になります。
「私もよく間違えるのですよ」
「私も間違えましたわ」
とアシスタントやボランティアさんが隣の席から小声でいうのは、間違うのは自分だけではないという同列意識をもっていただくのに効果的な優しさのシャワーの一例です。

「グー、チョキ、パー」では全員が殆ど同時に一斉に間違われるようにもっていく方法と、その意味。
お手玉回しではお手玉の配り方。お手玉を渡す動きのリズム性、「替えて」のわかりやすい落ちこぼれが出ない説明の仕方。
失敗した時のものの言い方、最後に人数確認をしてお手玉の総数を皆で言ってもらう重要性。
籠の中にお手玉を投げ入れて、こぼれた数を数える際の、リーダーの立ち居振る舞い。
引き算をするにも皆で声を合わせて式をいい、答えを皆でいうことの意味。
これ等の説明を、話す言葉通りにここにナマで書くには、スペースから溢れてしまって書きつくせません。通信教育ならば、全てを文章で書かねばなりませんが、講習会では対面だから理解をしていただきやすいです。
講演予定時間の後半部分をゲーム体験にしている効果は、身振りや声の音程・テンポ、雰囲気を伝えやすいということです。
参加された方には、以上のようなスリーA予防ゲームのリーダー心得、優しさのシャワーをしっかり理解して頂きたくて、それを言葉と動きでお伝えしました。

小さな積み重ねが結果を生むのです。講習会で時間が少ないと、大事な解説を手抜きして、ゲームの実習だけで終わることになり、なんともモッタイナイです。「ゲームの哲学」といえば大げさでしょうが、それぐらいの意気込みで、私はゲームの解説を大事に思っています。

最初の「1から10まで」では、市から参加された方にゲームリードのモデルをしていただいて、助けてもらい有難いでした。(%ニコ女%)
参加の皆さんは、要所要所で大きく頷いてくださっていました。
予定の2時間があっというまに終わり、あとの2回は村岡さんに託して、お別れしました。

綾部は先進的な歴史があって、綾羽とり、呉羽とりという人たちが大陸文化の香り高い織物技術を導入された土地と聞いています。その先進的な意欲を、現代の子孫たちも持っておられるのだなあと、1500年の過去に思いを馳せ、各駅停車の懐かしい昔の駅名をなぞりながら帰りました。
(高林実結樹)