養成講座に伺う楽しみ

高齢の“お仲間さん”が教室に入って来られた時の挨拶で大切な事は、ボランティアさんやスタッフは、自分が話の「主導権を取らない」ことです。
このことをどこに行っても、しっかり肝に銘じて欲しいと言っています。すると受講生さんは、いわれなくたって、当然よねという顔をされますが、
「ついうっかり主導権を奪う事が起きがちなのです」と言うと不審げな雰囲気になります。
例えば、「あらぁ、綺麗な色のセータ−ですね。よくお似合いですわ」
そこまでは良いのですが
「私もその色が大好きです」は言わないように。

「今日は私の誕生日どしてなぁ」
間髪を入れず「あらあ! 私も今日が誕生日なんですよ」と 一緒、仲良し、と共感の思いで言うと、よさげに見えますが禁句です。
なぜならお仲間さんは、人生経験豊かですから、自分が言いたかった言葉を呑み込んで、
「あら、そうどしたか。おめでとうさんどす」と、相手を立てて話を合わせる習癖に追い込まれます。
あるいは言いかけた言葉忘れてしまいます。
自分の事を言うことは相手の自発的意思=言葉を押しつぶす行為になるのです。だから自分の事は言わない。

「あらぁ そうでしたか。おめでとうございます。」と、ありふれた挨拶に留めます。
徹底して相手を立てること。するとお仲間さんは、自分の主体性発言権が継続保持できるので、次の言葉を安らかに言えます。
ポケットから、もそもそと時間をかけて、手書きのしわだらけになった「按摩券」を広げながら、
「是をなあ、孫がお祝いやというて、呉れましたんや」と、見せたりされます。

目を見開いて聞いていた受講生さん達が一様にナルホドという顔になってくださいます。それを見るのが講師冥利です。
受講生さんも真似をして、次の人に教えてほしいものです。