6月26日、認知症専門のデイサービスセンターに9回目の訪問に行った。今回は一人でなく、初めての見学希望者同伴だった。
この見学者は既に何年もゲームリーダーの実績があって、ご自分も精神病院の認知症デイケアに慰問の訪問をしておられる遠来の朋である。
教室はデイサービスの室内だが、彼女とは途中から少し離れて座ることができた。
隣席の利用者さんへのフォローぶりを見るともなく見ていると、「出過ぎず、喋りすぎず、適切支援」が完璧で、さすがと思って嬉しかった。
彼女の見学の目的は、認知症が進行していて、「歌(童謡・唱歌)は知りません。覚えることはできません。考えることもできません」と言い募る癖のA子さんに学びたい、私がどのような接し方をするかを、実地に見て参考にしたいという目的なので、内心私は彼女の満足が得られるか否か、緊張していたのだった。
ところがこの日は、いつもと違って、大声で笑うなどは決してされない引っ込み過ぎる癖のA子さんが、不得手なことを言い募られることが無かった。異なる曜日に伺うので、9回目とは言っても毎回お顔を合わす訳ではない。5回目ぐらいの出会いだが、穏やかな日もあるものだなと、思った。
ゲームその1、その2は順番にユックリ目に運んだが、A子さんに「歌は歌わなくて良いですからね」と言い、刺激を小さくと願いながら小さめの声で歌うようにしたのが良かったか、全然声を出されないながらも、リズムの加速に乗られる。そればかりか、お手玉回しも、皆さん大きなイスで机に向かったまま、という条件下、変則ばかりで進めているが、すんなりリズムに乗れているA子さんを見て、内心舌をまく思いだった。
イスが大きくて隣席の人と、お互いが離れているため、ドジョウさんは割愛。
ジャンケンたすき取りゲームも全員座ったままで、楽しんで頂いた。
A子さんは、このときもリボンの本数変更に戸惑うこと無く、1本から2本、3本から5本へと増やしていった。一番先に私がカラッポになって、「ああ、空っぽ」と言って両手を見せると、A子さんは私を慰めるような優しい、にこやかな顔を見せてくださった。
長時間は難しいので、1時間程度でおいとまし、見学参加の彼女と事後のミーティングをした。彼女が、「目当ての困る人が今日はお休みでしたか」と問われたので、「ショートカットのあの方がその人A子さんですよ」と答えたので、信じることができないとばかりに落胆させてしまった。せっかく遠隔地から、現場実習のつもりで来られたのに、申しわけなかった。
考えてみると、私なりに回数を重ねて、個人対応の仕方を掴めるようになって居ることに気づいて、密かに安心したのだった。次回もうまく進めることが出来るかどうかは疑問だが、苦労を積めば積むほど、報われるような気がする。