第3期の「脳いきいき元気アップ教室」−お仲間さんを中心として
−珍しく男性の方が多い教室に
福知山市中央包括支援センター主催の「脳いきいき元気アップ教室」も今年で3年目に入ります。今年は中央包括支援センターの存在する惇明地区に限らず、旧福知山市の各地から、特定高齢者の方に教室参加を呼びかけて13名の申し込みがありましたが教室が始まってみると結局男性4人、女性3人の参加者となりました。
個性豊かな4人の男性
Sさん
豊かな声と正確な歌詞が特技、3拍子の歌“ふるさと”は歌詞がきれいだからというSさんの提案で今年初めて3番まで歌う事になりました。お仲間さんも3番まで歌いきって満足そうな笑顔でした。物語り歌を正確に歌いきるのが好きだと言われるSさんはその日の茶話会で「水師営の会見」の9番、鎮魂歌「戦友」の14番、「青葉茂れる櫻井の」の6番など長い歌詞を正確に歌いきられて静かなバリトンに皆さん聞き惚れていました。
「涙がでてしまって」と目を潤ませている方もおられました。カラオケ大会にならないかと心配したボランテイアもいましたが、Sさんはそれから後歌うことを主張されることはありませんでした。
Nさん
静かな紳士の「国鉄マン」:奥様を亡くされて痛々しい手荒れに悩んでおられたけれど、「お連れ合いに看取られて亡くなるのはこの上ない幸せです。本当にいいことをしてあげなさったのですね」と言うボランテイアの声に。次第に増えた笑顔と豊富になった話題が印象的でした。茶話会の時には、豊富な日本全国の旅の知識で楽しませて頂きました。
Yさん
引っ込み試案の笑わないYさんは2回目から、毎回のように模造紙に書いた玄人はだしの動物や花の美しい絵、短冊や色紙を一杯持ってきて下さり、教室は次第に美しく彩られました。南極への夢の旅行のおみやげに「山本画伯に書いてもらったオーロラの絵」などが入ってくるようになって、苦手だったリズムのゲームが少しずつ流れに乗って来だしたのに並行して、唄う声が大きくなり、当意即妙名な冗談といっぱいの笑顔が頂いた絵と相俟って教室を明るくしてくれました。お出迎えのときに遠くから大きく手を振って頂くようにもなりました。終わり近くには、みんなお仲間さんにあげてしまうから、とボランテイアの名前をこっそり聞いて名指しで色紙を頂いたりしました。私も、「一番好きな花は椿」と言ったのを覚えて下さっていて次の週に可憐な一重の椿の花の色紙を頂きました。送って下さっていたお嬢さんが忙しくなったからと毎回タクシーで来て下さいました。
Uさん
難聴でお仲間さんの「夢の旅行」を決める仲間入りが出来ないから、と自分から手を挙げて発案していただいた第7回の“夢の旅行”の行き先は山形、息子さんの赴任先で、夏に行ってこられたそうです。お土産の一つに山形名産のラ・フランスを挙げられました。その日の夜にボランテイアの一人の家にお歳暮のラ・フランスが届きました。“残念!もう一日早かったら—–”と思ったとき、目に入った箱にかかれた「食べ頃は一週間後頃です。」の文字。一週間後にいそいそと持っていったラ・フランスは完熟の美味でみんなでおいしいおいしいと頂きました。山形の自然がUさんと教室にくれたグッドタイミングの優しい贈り物でした。
笑顔一杯・しなやかで優しく・毅然として本当に心から楽しんで下さった3人の女性
Tさん
可愛く揺れたTさんの赤い花
ビンゴゲームの花の名前に「チロリンランプ」と書かれたTさん。誰も知らないこの花を翌週いつも押してこられるカートに一杯積んで持ってきて下さいました。濃い緑の葉の陰に揺れる赤い小さな可憐な花、Tさんそのもののようなチロリンランプはこの日一日教室の笑い声に揺れながら教室を見守り、“強い野草だから挿し木で幾らでもふえますよ”とボランテイアにもらわれて行きました。どこかの家に根付いているでしょうか。
3人の女性は、すっかり仲良くなって肩を寄せ合あったり、手を繋いで帰って行かれるようになりました。嬉しいですね。話す事などほとんどなかったのですよ。家でも教室のことを思い出しながらいつの間にか笑っているのですよとお見送りの時にいつも言って頂けました。
Kさん
小さい頃は体が弱かったけれど、いまは風船サッカーとバレーが大好き。体を使って沢山笑った後は楽しい—Kさんのゲームの楽しみ方はボランテイアを幸せにしました。笑うことなど無かったので本当に楽しかった、終わるのが淋しいとどんなに寒い日も正確に10分前にしっかりした足取りで歩いて来て下さいました。寒風の吹きすさぶ戸外で立ったまま話し込んで早く中へ入らないと凍ってしまいますよとまた大笑いです。
Sさん
こぼれるような笑顔の可愛かったSさん、暮れに足を痛められてとうとう最後まで来て頂けませんでした。早くお元気になって下さい。お手紙は届いたでしょうか。
これは15回の教室の合間に垣間見たお仲間さんのほんの一部の表情です。高齢者の生きて来られた人生の豊かさと沢山の経験は測り知れない程多様で奥深くその人格を形作っているのでしょう。もっともっと知りたかったです。
少人数であっただけに教室は和気藹々、お一人お一人との交流も細やかでお会いできなくなるのがこれまでにも増して辛かったです。でも、最後の茶話会では、「皆さんと出会えて本当に楽しく元気をもらいました。これからも教えてもらったゲームで時々脳を鍛えながら、いろんな所へでかけていくようにします」と積極的な何より嬉しいメッセージを頂きました。
今年は例年になく雪が多くて、何度も40センチ以上の積雪があり、来られないときもありました。それでも難儀しながら3人、4人と足を運んで下さり嬉しかったのですが、2月の3日は前日からの雪が夜になっても降りしきるのでとうとうお休みになりました。最後の17日には太陽が顔を覗かせ、4拍子のゲームでは「春の小川」が歌えました。皆さんお元気で。また会いましょう。
(文責:村岡洋子)
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第3期「脳いきいき元気アップ教室」を終えて見えてきたこと
今期の特徴はお仲間さんが少人数で男性が多いこと、それぞれが個性豊かであること、女性同士は早くから仲良くなられ、よく話し、帰りも一緒に帰られる姿を目にして嬉しく思ったものです。
そんな中、男性の繋がりが見えなくて気になっていた時、ジャンケンゲームで「○○、頑張れ」と声援を送られたのを見て心が熱くなりました。言葉は少ないですが仲間意識を持っておられることにホッとし嬉しく思いました。その後の教室は、積雪で欠席者があったりなど天候に悩まされましたが、お仲間さん達は、それぞれの個性を出しながら、元気に明るく、豊かに変わっていかれる状況はいつもと変わりませんでした。
今回、15回を通して教室に参加させて頂きずいぶん勉強になりましたが同時に、見えてきた事のいくつかを自戒を込めて振り返ってみたいと思います。
その1つは、お仲間さんの人数が少ない分、それを上回る人数のボランテイアの私語が多くなり、ボランテイアの方々の個性がそのまま教室の雰囲気に反映して、毎回、教室の雰囲気が微妙に違っていたことです。いつもおなじ落ち着いた癒しのペースを大切にしなければならない教室で、雰囲気がころころと変わることがお仲間さんにとって果たしてよいことだったのでしょうか?
第1期・2期・3期と回を重ねる毎に、私達ボランテイアの心に「マンネリ化・緊張感欠如」があったのではないでしょうか?
私達ボランテイアの役割はあくまでもお仲間さんに「あかるく、あたまを使って、あきらめない」の精神を自分のものとして感じ取ってもらうことだと思います。たとえメンバーが代わってもいつも同じ状況を提供できる事ではないでしょうか?
「認知症予防」は、福知山市が特に力を入れている課題の一つであり、今後ますます重要視されます。「福知山市認知症予防の会」は、スリーAを通してその役割の一端を担っています。今回第3期目の教室を終了して見えてきた上記の問題・課題を少しでも解決し、より充実した教室を提供できるよう、私達ボランテイア一人一人が質の向上を図る必要が有ると思います。例えば、スリーA精神「一人一人の尊厳・癒しの心・優しさのシャワー」を常に心に置きお仲間さんと向き合う、質の向上を図るための研修会を実施するなどです。
ボランテイアの方一人一人は素晴らしく、見習うべきことも多々あり、一生懸命教室を盛り上げようと頑張っておられるのは良く分かります。それが団体となったとき、今回のような状況が生じて来たのではないでしょうか? 私達の思いは一つ、「認知症になりたくない。防ぎたい」、「例え認知症になっても自分の家で、地域の中で安心していきいきと暮らしたい」と願って居る人々の“拠りどころ”になれることです。
「認知症予防の会」が、しっかりと福知山の地に根付くことがこの思いを次の世代に繋げること思います。そのためにも、その基盤になる大地を耕すことを課せられているのではないでしょうか!
以上、自分自身の反省・自戒を込め、きになったこと・考えたことを述べさせて頂きました。
最後に、教室を終了されたお仲間さんのその後はどうするのか!!今後の課題です。
(文責 スリーAチャレンジ M.S. Y.H.)