昨日の記事の続きです。
昨日は状況説明だけだったので、今回は私のその時の感じた気持ち中心に述べたいと思います。

最初に、背中に違和感を感じた時に私が感じたことは、
「気のせいかな?」
「込み合ってるしたまたま私の背中の位置に手があるだけだろう=(意図的に触っていない)」
でした。

その男性が意図的であろうがなかろうが、
見知らぬ人(知っている人でも触って欲しくない人はいっぱいいるが/男性・女性にかかわらず)
に触られるのは気持ちのいいものではないので、
とりあえず、その男性を「チラ見」しながら、体を左にずらしました。

この「チラ見」は、「あなたの手が触れてて気持ち悪いよ」というアイコンタクトのつもりでした。
これで、痴漢でなければたいていの男性は慌てて体の方向を変えます。
どんなに込み合っていようが。
だって、疑いの目を向けられているわけですし、痴漢に疑われるだなんて、
無実の男性としてはこんなに屈辱的なことはないですもんね。

「チラ見」しながら体を左にずらしてみたところ、
なんと、男性の手も一緒にずれて来て、私の背中にピッタシくっついています。
それでも、私は、「電車も揺れているし、もしかしたら偶然かもしれない」などと思います。
これはおそらく被害を受けた人の多くの共通した感情でしょう。
「自分の身に起こっていることを信じたくない」という一種の防衛です。

そして、もう一度「チラ見」しながら体を前に移動させてみました。
足は動かせないので、少し前かがみになった姿勢です。
ところが、それでも指が1本ピッタリとついてきます。
さらに前に移動してみましたが、やはり指がくっついています。
前かがみの姿勢は不自然な姿勢だったので、長く持たず、すぐに元の位置に戻りました。
すると、これまで以上に手の動きが露骨になってきました。
息遣いまで荒くなってきて、気持ち悪いったらありゃしません。

この時点で、「これは痴漢だ」と確信を持ちました。
ここまでは、朝まだ寝ぼけ眼だったのもあるし、
専門家と言えども、普段は私もフツウの女性なんで、
「どうしよう〜」という慌てる気持ちがありました。
たぶん、多くの女性も私と同じような気持ちを抱き、行動をとっているでしょう。

でも、残念なことに、私の場合もそうだったように、
被害を受けている側がいくら「いやです」「やめてください」と行動で訴えてみたところで、
痴漢をする側は
 気づかないか、もしくは「相手も喜んでいる」「相手も自分に気がある」と受け取ります。
 「チラ見」も、「やめてください」ではなく「私もあなたが好きよ」と受け取ります。

この受け取り方を、専門的には「認知のゆがみ」と言い、
性犯罪者には、特有の認知のゆがみ/偏りがあると言われています。

さて、話を戻しますが、
「痴漢だ」と確信してから、私はさすがに頭を切り替えました。

さてさて、どう行動しようか。
資料を読むふりして、頭の中でグルグル考え始めました。
その間も、私の背中に男性の手が這い回っています。
もはや、「チラ見」は逆効果だと悟り、抵抗らしき抵抗はせず、
触る場所に変化が見られたら、即座に行動に移せるように
背中に全神経を集中させながら頭では作戦を練っていました。

一方で、人生はじめての電車内での痴漢被害体験に、
「こんな気持ちになるんだ」と客観的・冷静に自分を分析する自分もいました。

大声で「やめてください」と言おうか。
 →たぶん、男性は「何ですか?」「私じゃありませんよ」としらばっくれるだろう。
手をとって捕まえようか。
 →荷物を両手に持っているので、捕まえるのは無理だ。
この男性、何度も目が合うが行為をやめないどころか
エスカレートさせるところを考えると、
かなりふてぶてしいし、おそらく常習性が高い。
その分、執着が強く、私の行動によっては、その後危険かもしれない。
このまま勤務先(刑務所)につけてくるなら、どうぞどうぞ!ってところだが、
ややこしいのは、ノウノウと「事実無根」と言い逃れするだけでなく、
反対に私に対して訴えてくるようなことをしたときだ。
訴えられるのはかまわないが、こんなことで貴重な時間をとられたくはない。

でも、このまま逃すことはできない。
私はまだいいが、他にこれ以上被害者を出してはいけない。

などなど、考えているところで、「加古川駅」に到着した。
運の良いことに、その男性も降りるようだ。
加古川駅は必ず毎朝構内に警察官が立っている。
その警察官に伝えよう。

そう決めた私は、電車を降りた瞬間に、真後ろにピッタリついてきていた男性を
振り返り、真正面から顔を凝視しました。
その男性、なんと、身じろぎもせず、堂々と私と目を合わせてくるのです。
ふーん、そう出るか。
これは一筋縄ではいかないタイプだ、と確信。

その男性は私のすぐ後ろを歩いていたので、
私が警察官にまっしぐらに駆け寄った姿を見ていたはず。
慌てて走り去ったのか、一瞬にして男性の姿は消え、
警察官が確認することはできなかったのが心残りでしたが・・・。

この警察官の対応の良さは昨日も書きましたが、
この警察官がこんなにすばらしい対応をしてくると知っていれば、
私はきっと、電車内で「この人痴漢です」と言い、周りの人に協力を求め、
取り押さえてもらい、現行犯逮捕してもらうことに躊躇しなかったでしょう。

触られたところが「背中」だったために、
「それは痴漢被害とは言えませんよ」と警察で言われるのではないか、と
不安に思ったのが私を躊躇させました。
警察で「それは被害といえない」と言われたら、
私はより一層腹立たしい気持ちになるし、
それだけでなく、痴漢した男性は図に乗り、行動化をさらに増長させることになります。
それを避けたかったので、声をあげられなかった。

でも、すばらしい警察官がいてくださるなら、
今度からは声をあげよう(%ニコ女%)

それが、被害者をこれ以上増やさないことになるし、
加害者にもこれ以上罪を起こさせないことになりますから。

◆◆ ■■ ■■ ◆◆

私は立場上その男性に恐怖心は全く抱きませんでしたが、
おそらく、多くの女性が被害に遭ったときに最初に抱く感情は
「恐怖心」でしょう。

この「恐怖心」から、身体がフリーズして、動けなくなるのです。
動けなくなって声も出せずにいることを
痴漢側は「相手も望んでいる」と受け取ります。
「いやならもっと激しく抵抗するはず」という彼らなりの理論があるようです。

たぶん、痴漢だけでなく、一般の男性も、また被害体験のない女性でさえ、
「いやなら大声を出すはず」という考えを持っている人が多いようです。

でも、「恐怖心」がなくても、実際には、なかなか声を出すのは難しいというのが
私自身が体験して知ったことです。
いろいろと考えてしまい躊躇してしまう、という体験をしたことは、
まさに私にとっては貴重なことでした。

こうして、情報を発信することも「躊躇」を払拭することになるなぁとあらためて思い、
さぼってちゃいかん、いかん!と自戒しているところです。

(%エンピツ%)被害を受けた人へ
 被害を受けたことは、全くあなたのせいではないですから、
 とにかくがまんしないで、警察か相談機関に相談してみてくださいね。
 
 
(%エンピツ%)電車で人の身体を触っている人へ
 その人をとても傷つける行為ですからやめてください。
 あなたのおかげで、電車に乗れなくなり、学校や勤務先に行けなくなっている人も
 いるかもしれませんよ。
 逮捕されればあなたの人生や家族の人生までも大きく狂わせることですから、
 あなたや家族にとってもいいことは何もありません。