スリーA予防デイサービス「折り梅」
所長 増田末知子
認知症からのカムバック
Kさんは72才の女性です。5か月前からデイサービスを
開始しましたが、無表情でボーッとしていて、記憶も悪く、
何回も同じ話をしていました。脳機能を測定してみますと
30点満点のMMSEテストは22点でした。前頭前野の測定を
するかなひろいテストは8点で、心の状態を表すバウムテスト
は小さな木を左側に書きました。全体の判定として、
軽度認知症の進んだ状態だと思われました。
3カ月ほど過ぎた頃、ご主人様が
「この頃、家内が変わって来ました。今までは犬を叩いたり、
家族に怒ったりしていましたが、犬を叩かなくなり
穏やかになりました」とのことでした。5か月に入った頃、
表情が明るく生き生きとして、自分の方から他人に話しかける
ようになりました。ご主人様は
「今までは、交奥の説明など読まなかったけれど、この頃読むように
なりました。【懐かしい映画をやっているから見たい】
と自分から希望したので、二人で映画を見に行ってきました。
やる気が出て来て元の家内が戻ってきたようで、本当に有り難いです」
5ヶ月後の脳機能の判定は26点、かなひろいテストも17点まで上昇して
バウムテストでは大きな木をしっかり描きました。気持が大きくなって、
ゆったりしてきたのだと思います。状態も落ち着いて、笑顔でお喋りが
できるようになって来ました。認知症が良くなるとは、脳機能が良くなる
だけでなく日常生活がしっかりしてくることですが、Kさんが短期間で
正常域に近い状態にカムバックできて本当に嬉しく思いました。
最近、認知症ケアとしてのフランス発のユマニチュードが取
り上げられますが、スリーAは20年も前から似た方法を
行っています。スリーA方式は、寂しくなっているKさんの心に
「優しさのシャワー」をいっぱいかけて心に寄り添います。
例えば愛情を込めて話し掛け、沢山褒めて、楽しく笑うことで
やる気が出てきます。ユマニチュードも似ています。Kさんは活
動全体を通して頭を働かせ、心が豊かになってやる気が出たのだ
と思います。これがKさんがカムバックするきっかけになりました。
多くの方に認知症の世界からカムバックして頂きたいと思います。
2014年9月2日号 厚生福祉 時事通信社