☆不登校について— 「不登校再考」の講義より *4*

進学率は74年に90%を超えその伸びは緩やかになり、90%台で現在まで安定しています。一方長欠率の方はその辺りから増加していきます。それまでは進学率が高くなればなるほど、長欠率が減っていったのに、なぜ進学率がその限界に近いところまで到達してからは、逆に長欠率は増えていったのでしょうか。

 この現象を見て、私の脳裏に浮かんだのは、アドラー心理学と需要と供給のバランスです。心理学と経済学という一見何のつながりもなさそうなものが、まるでデニッシュのように混ざりあいながら、作用しているように感じました。

 まず需要と供給の視点から見ていきますと、進学率が90%以上となりますと、求職者のほとんどが高卒かそれ以上ということになります。つまり仕事を得るために学歴は“当たり前”で、そこからまた熾烈な競争が始まります。従って「とりあえず学校に行っていたら幸せになれる」という学校神話の一端は崩れ、段階的には「中学、高校に行くだけでは不十分で大学まではいかねばならない」に変容し、さらに「大学に行ってもまだ確実ではない」やら「大学院に行っても厳しい」とやらに変化していきます。

 ただ複雑なのは、現代でも学校神話は部分的には有効で(というか少数ではない何人かの頭の中では事実)、その他にも“実力主義”だの、“生きる力”だの様々な概念と混ざりあい、鋼の錬金術師も真っ青のキメラ状態、昔風に言うとヌエのような状態に教育がなっている感があります。

 学校と“生きる力”等の概念も面白いので後で述べるとして、今注目したいのは殆ど全員が高卒という社会状況が個々の心理状態にどういう影響を与えるのかということです。